乱高下するのは初めてではない
最初に指摘しておきたいのだが、このレベルの乱高下は珍しいものではない。たとえばビットコインは、2014年、2015年、2018年、2020年に、60%以上も値下がりしている。暗号通貨は、価値が急騰すると注目が集まるが、現在のような急落は以前にも起きている。こうした状況は「胃が痛い」かもしれないが、いまに始まったことではないのだ。
今回の急落は、以前と何が違うのだろうか。それは、価値がじりじりと下がる状況が何カ月も続いていることだろう。しかし、2015年の値動きもほぼ同じようなものだった。さらに、過去にさかのぼればわかるように、価値保存手段としての暗号通貨のパフォーマンスはここ数年、芳しくなかった。ということで、2022年の状況はさほど驚きではない。
デジタルゴールド?
一般の市場が困難な時期を迎えていても、暗号通貨は持ちこたえるはずだと期待する人もいる。そうした人はしばしば、暗号通貨をデジタルゴールドと考えている。しかし、思い出してほしいことがある。2022年は、ゴールド(金)相場にとっても胸躍る年ではないことだ。年初からは6%ほど下落している。
たしかに、この下落率は、ビットコインやイーサリアムのパフォーマンスと比べればずっとマシだ。しかし今年は、株であれ、債権であれ、オルタナティブであれ、多くの資産で価値が失われている。つまり、どのような資産であろうが、2022年に順調なパフォーマンスを維持することは困難なのだ。
ドル高
ドル高も助けにはなっていない。ドル高が進むにつれ、ドル建てで取引される資産の大半は、その価値が下落している。たとえば、ユーロ建てのビットコインの場合、下落幅は、ドル建てと比べれば10%ほど小さく、今年に入ってからの通貨変動と一致している。
米国のインフレ率が急上昇するなかでドルが持ちこたえているのは、米連邦準備制度理事会(FRB)が、他の多くの国々よりも速く金利を引き上げているからだ。ドルは、他の通貨と比べて安全な逃避先だと見られている。