この検査増加仮説に対する証拠はある。上のグラフの赤い線は、検査を受けた人の中で陽性だった人の割合を表しており、新型コロナの2年間(インフルエンザはほぼゼロだった)を別として、2022年の「陽性率」はオーストラリアの平常時とくらべて著しく低い。低い陽性率と多数の検査陽性者数を組み合わせると、検査総数が通常より、おそらくかなり、多かったことを意味している。
インフルエンザの強さをより正確に表わしている可能性のあるデータを、オーストラリアのインフルエンザ様疾患(ILI)の調査結果で見ることができる。下の図の数値は、オーストラリア定点実地研究ネットワーク(ASPREN)およびビクトリアン定点実地インフルエンザネットワーク(VicSPIN)として知られている2つの一般開業医「定点監査」ネットワークで見つかったILI症例数(緑)を示している。
2011~2022年にオーストラリアの定点調査ネットワークで発見されたインフルエンザ様疾患の症例数(世界保健機関の世界インフルエンザプログラム)
2022年シーズンが2020年、2021年より厳しかったことは間違いないが、それは驚くことではない。理由は新型コロナパンデミックだ。しかし、それを除くと、オーストラリアの2022年のインフルエンザ流行期に注目すべき点はなく、2012、2014、2015および2017年と比べてむしろ平穏だったように見える。オーストラリアの2022年インフルエンザシーズンが「かなり悪い」という証拠が私には見えない。
2番目の主張である南半球の症例数が北半球の症例数の指標であるという点についても同じデータを使うことができる
米国もILIのデータを報告している。
2011~2022年の米国における定点調査結果。クレジット:世界保健機関(WHO)の世界インフルエンザ・プログラム
もしオーストラリアが北半球におけるILIの指標の役割を果たしているのなら、各シーズンのピーク時期における症例数に高い正の相関が見られるはずだ。両者の値をプロットすれば、概ね右上がりの線に乗るはずだ。以下のグラフは、そうではないことを示している(むしろ相関はわずかに負である)。
オーストラリアと米国のインフルエンザ様疾患に相関はない。
以上のように、オーストラリアがインフルエンザの米国の指標であるという証拠はない。これは、米国のインフルエンザシーズンが穏やかであるという意味ではない。「まだわかっていない」だけだ。
(forbes.com 原文)