「最初のころは、『それならCO2の排出量をゼロにして、高い製品を売ってみればいいんじゃないですか』など、ちゃかすような声もありました」
潮目が変わったのは20年夏ごろからだ。SDGsがメディアで頻繁に取り上げられるようになり、社内の空気が変わった。自分たちの活動は世の中の潮流に乗っていると社員が実感し始め、「秋ごろからは自発的なアイデアがどんどん出るようになりました」。
社員の次は取引先である。坂本が目指すのは、化粧品とゴム業界のゲームチェンジャーになること。だが「期待していたスピード感が10だとすると、いまは3。正直、まだまだです」と坂本は言う。
「化粧品売り場に、エシカルやサステナブルを価値に変えて高く売っている商品がほとんどない。それでいいのかという話です。業界が変わるかどうかは、これから1年の頑張り次第だと思います」
ゲームチェンジへの挑戦は始まったばかりだ。
坂本 昇◎1978年生まれ。大手精密加工装置製造会社を経て、雪ヶ谷化学工業へ入社。13年に代表取締役社長に就任。サステナブル経営を打ち出し、天然ゴムのフェアトレード問題の解決と、その市場創造に注力。
雪ヶ谷化学工業◎耐油性に優れた化粧スポンジ〈ユキロン〉で世界一のシェアを持ち、アジアを中心に工場や販売拠点が存在する。これまで天然ゴムの材料調達はフェアトレードの証明が無く、世界シェア7割の影響力を活かし独自の認証を開発した。業界に新しい付加価値の創造を促している。