近年、都内で急速に店舗を増やしている「ガチ中華」は、これまであまり注目されていなかったが、現代中国語圏で食べられている本場の中華料理であることから、昨年冬頃からテレビの情報番組で取り上げられるようになった。さらに今年に入ると、飲食系業界紙や雑誌、ウェブメディアからも問い合わせを受けるようになり、今夏以降は新聞各紙の取材が増えた。
ふだんは自分が取材する側なので、取材を受ける立場になると、気になるのは、各紙が一斉に「ガチ中華」を取り上げようとした理由もそうだが、彼らが自分の話のどの部分に関心を持ってくれたかである。
今回、記者の人たち一緒に都内の「ガチ中華」を何軒か訪ねたが、各紙で掲載された記事を照らし合わせることで、この現象を取り巻くさまざまな側面が見えてくるように思う。以下、掲載順に各記事が注目したポイントを紹介したい。
子供たちにも「ガチ中華」の記事
まず読売新聞の9月2日夕刊の記事。見出しは「ガチ中華で海外旅行気分」で、内容は「ガチ中華」が注目される背景について「ビジネスや留学で日本に滞在する中国人が増え、日本人に合せなくても経営が成り立つようになったことが一因。コロナ禍で帰国が難しくなり、こうした店がさらに増えた」というものだった。
この記事で面白かったのは、記事中に出てくる池袋の中華フードコート「沸騰小吃城」で出会った「新潟市の高校3年生の女子生徒」のエピソードだ。彼女たちはふたり組で、なんでもアイドルグループであるHey! Say! JUMPのメンバーのひとりがこの店に来ていたというテレビ番組を見て、夏休み中でもあり来店したのだそう。
「沸騰小吃城」は2021年9月にオープンした池袋では3店目となる中華フードコート
昨年9月の同店のオープン以来、筆者もしばしばこの店を訪れていたので、若い世代の日本人の来店が増えているのは実感していた。店長によれば、週末は日本人の比率のほうが高いくらいだという。
朝日中高生新聞のようなジュニア向けの新聞からも取材を受けた。同紙9月25日の見出しは「日本でも味わえるDEEPな中華料理」である。
「食府書苑」は中国語書店のオーナーが経営するフードコート
記事では池袋の中華フードコート「食府書苑」内にある西安料理店「凡記 西安肉夾饃」のビャンビャン麺の小麦麺を延ばすシーンが写真付きで紹介され、「こうした現地感の強い『ガチ中華』を紹介する本」として、筆者が代表を務める東京ディープチャイナ研究会の『攻略!東京ディープチャイナ』(産学社)が挙げられている。
東京・下北沢にカフェ風専門店もオープンした、日本の若い世代にも人気の西安生まれのファストフード「肉夾饃(ロージャーモー)」
また「(筆者が)中国のガイドブックづくりのため、たびたび現地で食べ歩いた」ことや「コロナで旅行に行けない。でも気が付いたら、現地でよく見た店が身近なところにあった」など、東京ディープチャイナ研究会の活動がコロナ禍から始まった経緯についても触れられている。