「ガチ中華」が日本に現れた背景としては、「法務省によると、昨年6月時点で日本に住む中国籍の人は約74万5000人。外国籍の中でトップです。中国人をお客さんにする店が増えるのは自然です」と説明。
また「20世紀の中国と21世紀の中国は、食に関して全く違うと言ってもいいくらい」という筆者のコメントに続き、中国で国内旅行が広がり地方の味を楽しむようになったことや、外食チェーンが増え趣向を凝らした創作料理の店ができたことなども挙げられている。
さらにそのような中国側の事情とともに、日本でも激辛ブームなど食の好みの変化があり、SNSで食の情報を発信する人が増えたことなどで、「ガチ中華」の人気が上がっている実態を中高生にもわかりやすく説明する内容になっている。
ジュニア向けの新聞らしく、この取材に同行した当研究会のメンバーで、読者と同じ年代の子どもがいる杉崎廣子さんのお子さんが夏休みの自由研究でビャンビャン麺づくりに挑戦したエピソードも紹介。杉崎さんは「日本の中国系食材店でも、うちの子どもたちはパッケージを見て、普通に『おいしそう』と選ぶ。世界にはいろいろなものがあると、若いうちに味覚の幅を広げておくのはいいこと」と語っていた。
実は、朝日小学生新聞でも、9月29日の「中国の食どっぷり味わう」という記事で、「ガチ中華」を扱っている。内容や構成は朝日中高生新聞と同じだが、「中国にルーツのある子どもたちも増えているので、こうした料理を自分や友だちの国を知るきっかけにできたらいい」という筆者のコメントで締めている。
実際、「ガチ中華」が子どもたちの目にどう映るのか、興味深いところだ。いまの子どもたちは同じ教室に両親が外国出身だったり、外国人とのハーフの同級生たちが普通にいたりする環境で過ごしている。大人たちとは「ガチ中華」に対する受け止め方は違うかもしれない。
日中関係の穏健な話題として
毎日新聞の9月29日夕刊「中華料理がつないだ絆」という記事は、ふたつの話が前編と後編でつながる構成で、前半は1979年に中国から残留孤児として帰国した蒲田の羽根つき餃子「你好」の八木功さんについて、後半は池袋の中華フードコート「友誼食府」と、そこに販売ブースを出店する上海料理店「大沪邨」のオーナーの沈凱さんのコメントが紹介されている。
「大沪邨」は1930年代の老上海のイメージを演出
沈凱さんは当初、中国人向けに料理の持ち帰りの店としてフードコートに出店したのだが、「SNSやテレビ番組などで店の存在が広まるうちに来店する日本人が増加した」と話す。記事にはないが、取材時に彼は「コロナ禍以後、店の売上が激減したが、フードコートの売上で救われた」と述懐している。彼ら中国人にとっても、今日の「ガチ中華」に対するメディアの注目は想定外だったようだ。