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2022.10.17 08:15

ブロックチェーンで国際送金「SWIFT」を迅速化するプロジェクト

Sergei Elagin / Shutterstock.com

銀行が国際送金に利用するグローバルシステムであるSWIFT(国際銀行間通信協会)は、最初にブロックチェーン技術を試験導入してから5年を経て、再度実証テストを実施する。

SWIFTは、配当金の支払いやエクスチェンジ・オファー、合併といった世界中の投資家や資金の流れに影響を及ぼす企業活動に関するデータ伝達を迅速化することを目指している。現状では、資産運用会社やブローカー、カストディアン(保管銀行)などのユーザーにデータが届くまでに多くの中間業者を経由するため、データに矛盾や誤りが生じる可能性がある。このため、エンドユーザーは、データを手作業で分類・比較・調整しなければならない。

こうした問題は、ブロックチェーンを用いることで解決できるかもしれない。ブロックチェーンの最大の特徴は、不変の台帳システムであることだ。また、参加者が各データの定義について合意する必要があり、データの登録前に検証が行われることも、このような用途にブロックチェーンを用いる利点だと言える。

今回のテストには、シティグループやバンガード、ノーザントラストなどの大手金融機関が参加する。

「我々は、ブロックチェーンや分散型台帳技術などの革新的なテクノロジーに大きな関心を寄せている。我々は常に技術を検証し、顧客への約束を果たす方法を探している」とSWIFTのチーフ・イノベーション・オフィサーであるTom Zschachは述べた。

このテストには、エンタープライズテクノロジー企業Symbiontの「Assembly」プラットフォームが用いられる。企業の行動データは、SWIFTネットワークを使用して送信され、SWIFTによって単一のフォーマットに変換されてSymbiontのブロックチェーンにアップロードされる。

Symbiontのブロックチェーンは情報を比較し、共有するために単一の記録を作成する。ブロックチェーンによって単一の記録を作成することで、データを手作業でレビューする手間を省き、時間とコストを削減することが可能になる。

「このソリューションは全てのデータを取り込み、スマートコントラクトを使って正規化して内部で比較するため、ユーザーは照合する必要がなく、1つのゴールデンレコードを取得することができる。ブロックチェーン技術の大きな価値の1つは、不変の台帳と、その情報の履歴を保有できることだ」と、SymbiontのCEOであるMark Smithは言う。

SWIFTは1973年に設立された非営利団体で、全世界で1万1000の金融機関が参加している。SWIFTは、銀行間通信のインフラを提供し、1日平均1兆5千億ドルを決済している。このネットワークは、国境を超える決済を行う上で特に重要であり、国が異なる銀行間で口座の入出金を指示するメッセージを送信している。SWIFTは、決済やメッセージングのインフラを提供する一方で、中継銀行を経由するために時間とコストがかかるという批判を受けている。
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編集=上田裕資

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