天然ガス問題は東地中海に「希望と紛争」をもたらす

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ウクライナとイラン、さらにはOPECの生産量減少によって、エネルギー市場がすでに騒乱状態にあるなか、世界の別の地域がエネルギー問題で身悶えしている。天然ガスは、ある不安定な地域に希望と紛争の両方をもたらしている。その地域とは、東地中海だ。

この地域の最初の火種はイスラエルとレバノンの海洋境界線の西側地域だ。2つのガス田、カリシュとカナが発見され、開発したい当事者にとっての問題は、ガスのどの部分を誰が所有するかを、その正確な場所に基づいて決めることだ。カリシュ・ガス田の場所はイスラエル領海内と見られているが、カナ・ガス田には両国の主張が交差している。

もちろんこれらの国は、イスラエルが1948年に立国して以来基本的に戦争状態にあり、両国の間で真の国境が合意に達したことはない。さらに事態を複雑化しているのが、レバノンは過去40年にわたりヒズボラと呼ばれるイランが支援するシーア派テロリストの拠点となっており、彼らはイスラエルに対する憎悪を隠すことなく、文字どおり破壊したいと思っていることだ。

それにもかかわらず、数カ月にわたり、米国の調停役であるアモス・ホフスタインは、両国の協定をまとめようと取り計らってきた。10月11日、彼の努力は実を結んだようで、イスラエルとレバノンはいずれも米国の最新提案に合意した。

時間を無駄にすることなく、レバノンのエネルギー相ワリード・ファイヤドは、フランスのエネルギー会社トタルエナジーズがカナ・ガス田の現地調査をただちに始めると発表した。このニュースにも関わらず、かつレバノンにとっては不幸なことに、この国は過去数十年間どこの国よりもひどい崩壊状態にある経済を救うためのエネルギー収入を未だに得られる見込みがない。

事実、レバノンのエネルギー部門は、すでに腐敗で知られているこの国の事業分野の中で、最も腐敗している分野の1つだ。そしてもちろん、レバノンは上で述べたヒズボラとの対応がさらに必要であり、彼らの主目的は、レバノンの生活を改善することより、イスラエルを破壊することのようだ。

ヒズボラは交渉過程を通じて、イスラエルと本格的交渉を一切行わないようレバノン政府を脅迫し、今夏にはドローンを飛ばし、イスラエルがカリシュ・ガス田における生産作業を開始するのを阻止しようとした。しかし、レバノン経済が完全崩壊に近い状態にあるのは、ヒズボラの国家内国家としての過去の行動によるところが少なくないが、後援者であるイランが強い国内の抵抗に直面している今、ヒズボラはレバノン大統領、ミシェル・アウンがイスラエルとの交渉を押し進めることを阻止できていないようだ。
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翻訳=高橋信夫

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