1998年頃になると、メーカー各社はパソコンだけでは大きな利益が得られなくなったため、パソコンの販売に連動して追加収益を得る方法を探し始めた。彼らは、これを「リカーリングレベニュー(継続収益)」と呼んだ。
パソコンメーカーは、広く使われているアプリや、ウィンドウズの機能を強化するクリエイティブなアプリ、ユニークなインターネットサービスなどを開発している大手ソフトウェア開発者と交渉し、少額の手数料でパソコンにこれらのソフトウェアをプリインストールした。
メーカーは、これをハードウェアの販売後も継続的に収益を上げ続ける有効な方法だと考えた。しかし、一部の法人向けには有効だったものの、消費者向けには「ブロートウェア(利用頻度が少ない不要なソフトウェア)」と揶揄され、大失敗に終わった。
2002〜2003年になると、パソコンメーカーはブロートウェアから距離を置くようになった。彼らは、かつてのようにパソコンを売り、ハードウェアとソフトウェアの付加価値を高めることで利幅を増やすしかなかった。
これに対し、アップルはこれまで通り革新的な工業デザインや優れたハードウェアとソフトウェアを通じて、同社ならではの高付加価値なエクスペリエンスを提供し続けた。
アップルは、製品の利幅について厳しいガイドラインを設けている。筆者は、スティーブ・ジョブズがアップルに復帰した翌年の1998年に彼と利益について議論したことがあるが、彼は「22%以下は認めない」と言っていた。その後の同社のハードウェア・マージンを見ると、ハードウェア製品は全て22%を大きく超えている。
アップルは、ハードウェアとソフトウェアの会社として知られているが、同社はこの20年間で最強の継続利益モデルを構築し、競合他社が羨む存在となっている。
継続収益を生むエコシステム
皮肉なことに、この継続収益モデルはMac製品ではなく、iPodを通じて始まった。アップルは、iPodで培った音楽ダウンロードストアを含むビジネスモデルを拡大させ、今では同社で最も急成長している「サービス事業」を作り出した。
アップルによると、App Store、Apple TV+、Apple Music、クラウドサービスなどを含むサービス事業は、有料サブスクリプションの利用者数が前四半期の8億2500万人から8億6000万人に増加し、過去12カ月間では1億6000万人以上増加したという。
アップルが構築した継続収益モデルの鍵は、ハードウェアとソフトウェア、サービスを含む同社のエコシステムにある。同社は、この強みを活かすことで製品の購入者に登録してもらい、充実した保証やサービス、ボーナスなどを提供して顧客満足度を高めている。
この結果、現在ではアップルのプラットフォームには8億6千万人ものユーザーが登録しており、付加価値の高いサービスをユーザーの好みに応じて提供することが可能になったのだ。