テクノロジー

2022.11.30 11:15

メタバースだから実現した硫黄島の戦前を見て現在を体験できる仮想空間




そういった状況のなか、日本青年会議所関東地区協議会(JC)は15年にわたり青少年育成を目的とした硫黄島渡島事業を実施している。2020年はコロナの影響で中止となったが、2022年の硫黄島渡島事業では360度の全方位を同時に撮影できる全天球カメラを持ち込み、JCのスタッフが2022年現在の硫黄島のリアルを記録。「硫黄島VR~忘れてはいけない~」を作るための素材として、捉えてきた。

ボランティアで「硫黄島VR~忘れてはいけない~」の仮想空間そのものの設計を行ったのは、VR蕎麦屋タナベ氏。東京・本郷の日本そば屋「手打そば 田奈部」で腕を振るうほか、メタバースブームが起きる以前から数多くの仮想空間の設計を担当してきたアーティストだ。

「恥ずかしながら硫黄島のことは、第2次世界大戦時に戦いが行われた場所、というくらいの知識しか持っていませんでした。でもこのプロジェクトのお話を聞くうちに、戦前に住んでいた方が今も生きていること、今も帰りたい、みんなで暮らしたいと願っていることを知りました。また硫黄島で眠っている方の遺族も心苦しいまま過ごしてきたことも知りました。そういうことを多くの人に知ってもらいたいと感じて、自分だったらということで手伝わせていただくことになりました」(VR蕎麦屋タナベ)



硫黄島三世の方々が所持していた思いのこもった戦前の写真のうち、今回は4枚の写真を当時の地形がまだ残っている【船見岩】の仮想空間と共に公開することとなった。なお硫黄島三世の方々によれば他にも数百枚の写真があり、将来的には他の写真も仮想空間で公開していきたいと考えているとのことだ。

「僕自身は、メタバースを新しいキャンバスだと思っています。VTuberのコンサートや音楽フェスティバルといった使い方だけではなく、映画やアニメ作品を作れるようなポテンシャルがあると思っています。その1つの表現方法の中に村おこしであったり、人の思いを保ち続けるために活用するのも素晴らしい。仮想空間を作ってアップロードをしてしまえば、日本人はもちろん世界中の人に見てもらえるという強みがあると思っています」(VR蕎麦屋タナベ)

取材・文 = 武者良太

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