IMFは2021年に6%だった世界の経済成長率について、2022年は3.2%に、2023年は2.7%に減速するとの見通しを示した。3カ月前には来年の成長率を2.9%と予測していたが、ロシアのウクライナ侵略やインフレ圧力の持続・拡大、厳格な新型コロナウイルス対策による中国の成長鈍化を理由に下方修正した。
米国の経済成長率については2022年は1.6%に引き下げた一方、2023年については1%に据え置いた。経済の減速が最も顕著になりそうなのは欧州だとし、ウクライナでの戦争に起因するエネルギー危機が来年にかけても引き続き「大きな打撃」になりそうだと記した。
IMFのチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャは今回の見通しに関して「要するに、最悪期はこれからだということだ」と説明。世界経済の3分の1は今年か来年に縮小する公算が大きいとし、「多くの人にとって2023年はリセッションのように感じられるだろう」と述べている。
IMFは世界の物価上昇率について、年内に9.5%でピークをつけたあと、2024年には4.1%まで低下すると予測した。それでも昨年の3.4%よりかなり高い水準になる。一方で、中銀による急激な利上げが世界経済を「いたずらに深刻なリセッション」に押しやるリスクがあるとも警告した。
IMFによると、世界経済の2023年の成長率が歴史的な低さとなる2%を下回る可能性も25%ほどある。ゼロ成長あるいはマイナス成長に陥る可能性は10〜15%ほどだとみている。
急激なインフレを受けて世界各国・地域の中央銀行が新型コロナ時代の金融緩和政策の転換を余儀なくされているが、物価の上昇には歯止めがかかっていない。エコノミストの間では、物価抑制を優先するあまりリセッション(景気後退)を招きかねないという懸念も強まっている。
バンク・オブ・アメリカは先ごろ、インフレの長期化とそれにともなう利上げによって、米経済、なかでもかつて活況を呈していた住宅市場が「懸念されるほど悪化」していると顧客に警告した。米株式相場は今年、2年近く続いた上昇から一転して約25%下落しており、米新築住宅販売は今夏6年ぶりの低水準を記録している。
(forbes.com 原文)