なりきり演技とファッションにも注目「スペンサー ダイアナの決意」

(c) Pablo Larrain 2021 KOMPLIZEN SPENCER GmbH & SPENCER PRODUCTIONS LIMITED

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題名にある「スペンサー」とは、ダイアナ元皇太子妃の旧姓。映画「スペンサー ダイアナの決意」(原題「Spencer」)は、ダイアナが王室を離れて元の「スペンサー」に戻る意志を固めた運命の3日間をドラマとして描いた作品だ。
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ダイアナ元皇太子妃(ダイアナ・フランセス・スペンサー)は、1961年、イギリスの名門貴族スペンサー伯爵家の令嬢として誕生した。1981年、19歳のときに当時のチャールズ皇太子(現国王)と婚約、20歳になるとともに結婚式を挙げ、ウィリアム王子(現皇太子)とヘンリー王子の2人の子どもをもうけ母親となる。

しかしその後、チャールズ皇太子とのすれ違いが深刻化し、ダイアナは過食症に。さらに皇太子とカミラ夫人(現王妃)との交際が明らかになり、夫婦は別居状態となる。1996年にようやく離婚が成立し、そのちょうど1年後、ダイアナはパリで不慮の交通事故に遭遇して帰らぬ人となる。


(c) Frederic Batier 2021 KOMPLIZEN SPENCER GmbH & SPENCER PRODUCTIONS LIMITED
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まさに波乱に満ちた生涯だが、「スペンサー ダイアナの決意」では、チャールズ皇太子との関係が悪化して王室との軋轢も顕在化した1991年12月のクリスマスの3日間に焦点を絞り、ダイアナ元皇太子妃の凝縮された人生を描いている。

クリスマスを挟んだ3日間の出来事


作品の冒頭は、軍隊の車列を望遠で捉えたショットから始まる。エリサベス女王は、毎年クリスマスを冬の離宮であるサンドリンガムハウスに親族を集めて祝っていたが、軍隊の車列は、その屋敷に食材を運び込むためのものだった。この女王の行事がいかに重要なものであるかということを物語るシーンだ。

その車列のシーンとコントラストをなすように、ダイアナ(クリステン・スチュワート)が自らポルシェのハンドルを握り、たった1人で田園地帯の道を走る映像が続く。地図を手にして「ここはどこ」と呟くダイアナ。どうやら彼女は道に迷ってしまっているようだ。

道端のドライブインに車を乗り入れて、ダイアナが店に入ると、突然現れた皇太子妃の存在に店内がざわめく。店の人間に「すみません。道に迷っているの。ここはどこかしら」と尋ねるダイアナ。その姿は、彼女の現在の王室での居場所を暗示しているかのようだ。導入部から物語へと引き込まれる象徴的シーンだ。
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文=稲垣伸寿

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