なりきり演技とファッションにも注目「スペンサー ダイアナの決意」

(c) Pablo Larrain 2021 KOMPLIZEN SPENCER GmbH & SPENCER PRODUCTIONS LIMITED


クリステンは、1990年、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスの生まれ。父親がプロデューサー、母親が脚本家で、ジョディ・フォスター主演の「パニック・ルーム」(2002年)の子役として人気を集める。2008年には、ヴァンパイヤとのラブロマンスを描いた「トワイライト〜初恋〜」でヒロインを演じ、一躍スターの仲間入りを果たす。
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その後も「トワイライト」シリーズで主演を務める一方で、オリヴィエ・アサイヤス監督の「アクトレス〜女たちの舞台〜」(2014年)に出演、アメリカの女優としては初めてフランスのアカデミー賞にあたるセザール賞を受賞し、演技派女優としても開花。最近では短編ながら映画監督にも挑戦している。

今回ダイアナを演じるにあたっては、彼女が話す際のアクセントを徹底的に調べあげ、マスターすることに専心したという。そのうえで世界を魅了したダイアナの立ち居振る舞いの映像を繰り返し見て演技に結びつけており、前述の冒頭のドライブシーンなどでは、いきなりその成果も発揮されている。

また劇中でダイアナが身につけるファッションにも細心の注意が払われており、明るい色が多かったという実際のダイアナのファッションに合わせて、カラフルな色の衣装が選ばれている。
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ダイアナがクリスマスを過ごす屋敷に着くと、すでに場所や機会に合わせた服が用意されており、その選択においても彼女の意志が強く反映されるという演出がなされている。ダイアナがどの服をまとうかについては妙なサスペンスさえ感じられる。またファッションやバッグにはシャネルのものが使用されており、「悲劇」のなかではあるがゴージャスな雰囲気も漂う。


「スペンサー ダイアナの決意」は10月14日(金・祝)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国順次ロードショー (c) Claire Mathon 2021 KOMPLIZEN SPENCER GmbH & SPENCER PRODUCTIONS LIMITED

1人の人物の象徴的な時間を選び、丁寧に内面に切り込んでいくというパブロ・ラライン監督の手法は、「スペンサー ダイアナの決意」でも主演女優の演技やファッションの魅力とも相まって、見事にスクリーン上に結実している。単なる伝記ものではなく、観る者の心に深く突き刺さるクオリティの高いドラマとなっている。

本作のイギリスでの公開は2021年11月だったが、日本では今年の10月。おりしも劇中に登場するエリザベス女王が9月8日に96歳で崩御したばかりで、不思議な巡り合わせのタイミングとなった。ちなみに今年は、ダイアナ皇太子妃がこの世を去ってから25年目にもあたる。

連載:シネマ未来鏡
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文=稲垣伸寿

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