そして第3が「キーウのゼレンスキー政権を核攻撃するケース」だ。松村氏は「キーウにある在外公館を巻き込むため、攻撃のハードルは高いと思いますが、いずれにせよ欧米の反発が避けられないのなら、核攻撃後の空白を利用して全域をロシアに編入する等、一挙に雌雄を決しようとする可能性はあるでしょう」と語る。
専門家の一部にはロシアの核使用に対して「ロシア黒海艦隊を攻撃して壊滅させる」「経済制裁の強化」などの報復措置で対抗すべきだという指摘がある。だが、松村氏は「ロシアにとって敗北が迫った危機的状況であれば、そのような報復措置だけでは、ロシアは核攻撃を断念しないかもしれません」と語る。抑止を確実にするためには、「リビウなどの他都市に政権の一部を分散したうえで、キーウが全滅しても、一層強力な反転攻勢が待っているとロシアに明確に示すべきです。核を使っても勝ち目がない、希望がないとロシアに思わせる必要があります」と指摘する。
次に、北朝鮮はどうだろうか。松村氏によれば、北朝鮮の恫喝の基本戦略は「マッドマン・セオリー」だという。「北朝鮮は何をするかわからない、という印象を相手に植え付けることです。一連のミサイル発射もその一環です。日米韓は、更なる核・ミサイル開発を止めるよう政治・経済で圧力をかけ続けると同時に、軍事的にはそんなことをしても意味がないということをわからせる態勢を築いていく必要があります」
松村氏はそのうえで、日米韓はまず、北朝鮮の心理的恫喝に負けない態勢をつくる必要があると指摘する。「特に日韓の国民が北朝鮮の恫喝に負けない心理になることが必要です。政府ができる限りミサイル防衛能力を準備し、国民が必要以上の不安感を抱かないようにすることが重要です」。そして、ロシアに対する措置と同様、北朝鮮が核攻撃をしても勝利できない軍事状況に加え、逆に不利になると理解させるための政治的・経済的孤立化策などを準備しておく必要があるという。
プーチン氏と金正恩氏の核の恫喝が、単なる脅しではなくなりつつある今、国際社会も単なる説得や警告で済ませるだけでなく、核攻撃によっても打ち破られない軍事的に優位な態勢を構築する必要に迫られているようだ。
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