北朝鮮の朝鮮中央通信も10日、北朝鮮が9月末から10月にかけて戦術核運用部隊の軍事訓練などを行ったと報じた。金正恩氏の物騒な発言もずらりと並べた。正恩氏は「任意の戦術核運用部隊にも戦争抑止と戦争主導権獲得のごく重大な軍事的任務を課す」と宣言。一連の訓練について「敵に我々の核対応態勢、核攻撃能力を知らせるはっきりした警告」だと説明した。北朝鮮の最高人民会議(国会)は9月8日、核兵器の先制使用も辞さない、核使用の5つの条件などを定めた法令を採択した。正恩氏の発言は、法令が言葉だけの脅しではないことを強調し、今月中にもありうる7回目の核実験を示唆する狙いがあるのだろう。
核の恫喝を続けるプーチン氏と金正恩氏をどうやって食い止めるべきなのか。近く、共著『ウクライナ戦争の教訓と日本の安全保障』(東信堂)を出版する松村五郎元陸将は、ロシアや北朝鮮が核を使うのは、非常に差し迫った状況が前提になるため、報復攻撃などの懲罰的抑止だけでは十分とは言えないと指摘。松村氏は「核攻撃をしても、ロシアや北朝鮮が望む結果が得られないということを明確に示す必要があります」と語る。
松村氏はまず、ロシアがウクライナで核を使いうる3つのケースを挙げる。その第1が「ウクライナ軍を戦術核で攻撃し、攻勢に出ようとするケース」だ。ただ、松村氏はこのケースは考えにくいという。「放射能防護服やマスクをつけて車両を運転し、核攻撃でがれきの山になった場所を通過するのは簡単ではありません。ロシア軍は追加招集をするほど、正規軍はボロボロです。運良く、放射能汚染区域を通り抜けても、その先にウクライナ軍が待ち構えています」
第2が「ロシア軍が敗走する際、追いかけてくるウクライナ軍を戦術核で攻撃するケース」だ。戦術核で攻撃されたウクライナ軍は壊滅し、その場所は放射能汚染地域になる。松村氏は「第1のケースより可能性が高いと思いますが、数カ月程度の時間稼ぎにしかならないでしょう。欧米諸国がその後の反転攻勢に参加することも考えられ、戦争に勝利する決定打にはなりません」と語る。