経済・社会

2022.10.12 08:45

米上院外交委員長「サウジとの協力凍結を」 OPECプラスの減産決定に怒り

ロバート・メネンデス上院外交委員長(Photo by Kevin Dietsch/Getty Images)

米民主党のロバート・メネンデス上院外交委員長は10日、ロシアなどと原油の協調減産を決めたサウジアラビアについて、米国はあらゆる協力を「ただちに凍結」すべきだと訴えた。米政界ではサウジ政府に対する怒りが広がっており、米国と中東におけるその主要同盟国との関係が大幅に縮小されるおそれも出てきた。

「我慢にもほどがある」──。メネンデスは声明でそう憤りをあらわにし、サウジは「(ウクライナに対する)プーチンの戦争を金銭面で支援している」と断じた。サウジが主導し、ロシアを含む産油国でつくる「OPEC(石油輸出国機構)プラス」は先週、下落傾向にある原油価格を押し上げるため大幅な減産で合意しており、それを非難したものだ。

原油価格が高騰すれば、ロシア政府は欧米などの制裁下にあっても国有エネルギー企業から巨額の資金を得ることができ、それを元手にウクライナでの作戦を継続できる。一方で、欧州ではロシアに対する制裁のあおりでエネルギー危機に拍車がかかっている。

メネンデスは、サウジに対するあらゆる武器売却を阻止する考えも表明。メネンデスは上院外交委員長として外国への武器販売に拒否権を行使できる立場にあり、米国の外交政策をめぐって議員の間で大きな発言力ももっている。

ロシアのウクライナ侵攻によってエネルギー市場が不安定化するなか、原油相場は今年急騰しており、国際指標の北海ブレントは現在1バレル96ドル、米国指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は91ドルとそれぞれ年初来20%超上昇している。原油高を受けて米国ではガソリンが過去最高値をつけ、物価上昇率を40年あまりぶりの高い水準に押し上げている。

米議会では民主党議員を中心に、バイデンにOPECプラスの決定への対応を求める声が高まっている。

米国ではもともと、とくに2018年にワシントン・ポストのサウジアラビア人記者ジャマル・カショギがサウジ政府の差配で殺害された事件以降、サウジとの緊密な関係を維持することへの批判が高まっていた。ただ、ジョー・バイデン米大統領は7月にサウジを訪れ、サウジの事実上の指導者あるムハンマド皇太子と会談したほか、8月にはサウジへの30億ドル(約4400億円)規模の武器売約を承認しており、実際に関係を断絶すれば大きな政策転換になる。

民主党のチャック・シューマー上院院内総務も先週の声明で「ウクライナに対するプーチンの卑劣で残忍な戦争の継続を手助けするためにサウジがやったことは、米国人に長く記憶されることになるだろう」と警告。OPECを標的とした石油生産輸出カルテル禁止(NOPEC)法案の提出もちらつかせた。ただ、ブルームバーグが関係筋の話として伝えているところによると、同法案が近いうちに提出される予定は今のところないという。

シューマーや共和党のランド・ポール上院議員、民主党のバーニー・サンダース上院議員らは昨年、サウジへの武器売却の禁止に向けた動議も提出している。

サウジ政府をめぐっては、ドナルド・トランプ前米大統領と組む新興ゴルフツアー「LIVゴルフ」への資金援助も米国内で波紋を呼んでいる。LIVゴルフはこれまでに、PGAツアーから米国人著名ゴルファーを何人か引き抜いている。

LIVゴルフは今週、サウジでの初ツアーを開催する予定。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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