そもそもこの小委員会は、2021年1月から8回にわたって議論されてきた「大麻等の薬物対策のあり方検討会」でまとまったおおよその方向性をもとに話し合われているもので、特に大きな変更点やサプライズのある内容ではないのだが、今回、大手メディアやyoutubeのインフルエンサーが一斉に報じたことによって、さも昨日今日で日本でも大麻解禁の動きが出てきたような印象を与えかねないため、今一度ここで整理していこうと思う。
はじめに、この小委員会の発表によって、「法改正が決定されたわけではないこと」、「日本で大麻が吸えるようにはならないこと」、「栽培が誰でもできるようになるわけではないこと」をお伝えしたい。
現状の大麻取締法について
来年の通常国会に改正法案の提出の可能性がある大麻取締法だが、現状の大麻取締法の内容を把握しなくては現在何について議論しているのかの本質を見失ってしまう。
はじめに、現行の大麻取締法について説明をする。
現行の大麻取締法は終戦後成立した。そこからほとんど何も変わっていない法律だ。現在改正の議論がなされているポイントは大きく分けて2つある。
(現行法では)
1. 大麻から製造された医薬品は使用できない
2. 不適切な大麻利用・乱用を防ぐことを目的として、 大麻の成分ではなく部位による規制がなされている
他にも、研究が大変困難な状況や、栽培を巡る厳しい環境にあることも追記しておきたいが、他法律との兼ね合いもあり論点が拡散するのでここでは割愛する。
医療大麻解禁の誤解
まずは上記1の大麻成分の医薬品利用に関して話していこう。
今回の議論の出発点について、海外の医療目的での使用状況や、WHOの勧告を踏まえた国際機関での認識の変更、また、国内のてんかん患者側や医療側からの要請で「医療大麻」の解禁の議論がはじまった。
はじめに誤解を解いておきたいが、ここでいう「医療大麻」とは、大麻草を喫煙するものではない。大麻にはカンナビノイドという化合物が含まれており、有名なカンナビノイドとして、CBD(カンナビジオール)やTHC(テトラヒドロカンナビノール)などがある。
それらの成分は世界では医薬品として認められている国もある。
CBDの成分が主に含まれている製剤は、「難治性てんかん」という病気に効果があるとされている。また、THCを主な成分とする製剤は、抗がん剤の副作用(吐き気、食欲不振など)の軽減などに医療目的で使用されている国もある。
そもそも、CBDは中枢神経系への作用がほぼなく、依存性・中毒性の低さもWHOによってある程度保証されている。他方でTHCは中枢神経系への作用はあり、一定の有害性もあるが、医療的な用途における効果もあることもわかっている。
このような世界的な状況や研究から、日本も医療において製剤に限り、カンナビノイド製剤を認めてもいいのではないか、ということになってきた。