【解説】日本で医療大麻解禁? 大麻規制検討小委員会とはなんだったのか

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しかし、これはあくまで「成分」の話であって、「大麻草を医療目的で喫煙して使おう」という議論とは異なることを知っていただきたい。

また、現時点では法改正に向けたおおよその方向性を厚労省と有識者で決めてきたということに他ならず、この後厚労省内でさらに議論し、他省庁とも議論を重ね、閣議決定による国会への法案提出→国会での法案可決→公布を経て、治験で良い結果が出てPMDAが承認するという長い長い道のりがこれから待っていることは忘れてはいけない。「大麻が明日から解禁」、という単純な話ではないのだ。

使用罪の創設について


現行の大麻取締法では、使用罪はなく所持罪のみであることはよく知られていることだ。私個人の考えとしては使用罪をどうするべきかについて言及する立場にはない。命にかかわるレベルで大麻が必要な人に届く環境はあるべきだとは思う。

その上で、使用罪がなぜできようとしているかについて説明する。そもそも、大麻草やTHC様成分(中枢神経系への作用がある大麻成分)を有害としているという厚労省見解を前提とすれば、大麻草やTHC等を麻薬と同等に扱うというロジックは一定理解はできる。また、そもそもこのことについては今回の議論の前提となっているものだと理解している。

今回の法改正の大きな方針においても、

・「産業用としてのアサ」

・「CBDなどの向精神作用の無いカンナビノイド」

・「医療」、「研究」、「適切な栽培」

を合法として、他方アサに含まれる中枢神経系への作用がある化学成分を麻薬と同様として切り分けていく試みのように感じている。

現に小委員会でも、大麻取締法自体を医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)や、麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)へ移行する形も示唆されてきた。

その中で、昨今の若年層における大麻草使用の増加や、現時点では未定だが将来的に「医療大麻(ここではTHC製剤)を認めるときに、市中に出る可能性のあるアングラなTHCとの区別が必要であるという考え方や、所持罪しかないことによる捜査側の捜査上の煩雑さの解消という色々な思惑が動き、使用罪の創設の方向性となったのだと理解している。

アメリカでは、バイデン大統領による(選挙前のアピールとは言えなくはないが)大麻における規制政策の失敗と、大規模な恩赦の可能性が示唆され、今後中間選挙後にバイデン大統領が本気であれば大きく大麻政策が進む見込みだ。


バイデン大統領 / Getty Images

しかし、日本の国民の認識は「大麻ダメ、ゼッタイ」に近いものであり、使用罪がないことの方を問題視はされど、使用罪を創設することに過半数が反対の声をあげるようなことはないものと推察される。他方で、上記のような理由から使用罪を創設することはやむなしと官僚も政治側も考えているはずである。

日本における大麻の生涯使用経験率は2%に満たず、大麻を一部合法化している国や地域とは大きな差がある。大麻が実生活において日本国民に浸透しているとは到底思えない。まずは医療的な効果であったり、CBDの市井でのビジネスの広がりなどから、多くの方が大麻(から抽出される成分)に触れ、認識を徐々に変えていくしかないと私自身は考えている。「大麻、ダメゼッタイ」もよろしくないが、「大麻、ヨイゼッタイ」も同様に危険な考え方であると思う。
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文=柴田耕佑

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