ビジネス

2022.10.12 08:30

5年かけた国際標準化 ヤマト運輸がクール宅急便を世界に届けた日

ヤマト運輸CSO担当執行役員 梅津克彦


ISO化は果たした。次は規格をビジネスに生かすフェーズだ。ヤマトは2021年、DPDグループとともに小口保冷配送のコンソーシアム「FRESH PASS」を発足させている。
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「ヤマトがピッチャーとしてISO 23412に基づいて荷物を日本から海外に出しても、私たちのネットワークのない地域の場合、キャッチャーがボールを同じ基準で受け取ってくれないと品質を担保できません。『FRESH PASS』は、ピッチャーとキャッチャーの品質をISO 23412で最低限共通化するプラットフォームだと考えてもらえばいい」

ヤマトとDPDグループでサービスを共通化するなら通常の業務提携でもいい。しかし、両社とも地域で高いシェアを誇り、共通サービス化すると、競争法への配慮が必要になる。「FRESH PASS」は ISO 23412取得事業者に門戸を開き、委託と受託の関係を保ったまま品質を担保するオープンな枠組みであり、法的なリスクは低い。ISOを錦の御旗として活用した、実に戦略的でしたたかなやり方である。

狙いは単にISOを軸にした国際物流ネットワークを築くことだけではない。梅津が描くのはISO 23412のブランディングだ。
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「日本ではクール宅急便が定着したように、私たちのISO 23412に準拠した小口保冷配送サービスの価値をあらめて認知していただくには、世界でISO 23412=『FRESH PASS』というブランドを広めること。その配送品質の商品が日本に輸入されるようなアプローチがあってもいい」

日本発のルールメイキングで世界に新市場が創出され、それが回り回って日本の既存市場をも活性化していく。ヤマトが目指すゴールは、まだ先にある。


梅津克彦◎社長室 戦略渉外 兼 CSO(最高標準化責任者)執行役員。2013年、グローバル事業推進部長として世界で初めて「国際クール宅急便」を開始。クール宅急便のグローバル展開が、後のPAS発行からISO発行への布石に。

文=村上 敬 写真=平岩 享

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