さて、ワイン、とりわけ赤ワインはレスベラトロールといったポリフェノール類に、アルコール味、種の雑味、ブドウの枝や果梗(ヘタや柄の部分)の雑味を合わせてワインらしい重みを出していく。そこが各ワイナリーの腕の見せ所であることは、言うまでもないだろう。
吉野は言う。
「『Pureewine』の生産は、そういったワインの醸造過程に同期しています。たとえばブドウを破砕した時に、ほとんど絞らなくても自然に流れ出す果汁である『フリーラン』からできるライトなワインから作るぺーストは、同じく風味が軽い。逆に目いっぱい絞って作る『ハードラン』のワインには、皮の渋み、果梗の苦みが出るのでペーストにもその影響があります。
ワインが他の製品と決定的に違うのは、同じブドウ品種でも畑、年度、気候条件などによって、またワイナリーマイスターのブレンド方法によって、できあがるワインがまったく違ってくることですよね。消費者はそのわずかな違いを楽しむわけです。そしてそのワインから作るワインペーストやワインジャムも、各ワイナリーのとる醸造工程によって香味が変わるんです。
Rafael Elias / Getty Images
ワインのラベルにはフルボディ、ライトボディなどの表記はありますが、『香味』までは複雑すぎて表記できない。ワインペーストでも同様で、香味の表記は難しい。その分できるだけ、顧客の要望に添ったペーストを用意するようにしています。香味のよしあし、好き嫌いもワインと同じで、口にする人の感性で微妙に変わりますから。
また『シードオイル』はブドウの種に含まれるため、アルコール醸造では抽出されず、ペースト加工時に、破砕によって物理的に混ざり込みます。ワイン自体の味がすでに複雑ですが、ペーストには『それに加えて』オイル成分やオレアノール酸などが含まれるので、より複雑な風味が楽しめるというわけなんです」
夢の成分「レスベラトロール」が『フレンチパラドックス』を作った?
話をポリフェノールに戻そう。
アメリカ研究機関のテストによれば、ボリフェノールには抗酸化作用が高く、成人病に効果がある。また、北里大発のベンチャー企業代表、熊沢義雄教授も、「白ワインボリフェノールには乾質性肺炎の炎症を静める効果がある」としている。
「ワインペーストは、ワインの3倍強のボリフェノールを含みます。また、ワインはいくら飲める人でも飲める量には限界がありますが、濃縮したペースト、パテの場合は摂取限界をあまり考えなくていい。使用方法は将来、もっと広がっていくと思います」
そして、ポリフェノール類の中でも、とくにワインに多く含まれる「レスベラトロール」は強い抗酸化作用をを持つ。アンチエイジングなどの効能も期待されており、近年注目を浴びている成分である。
吉野氏は言う。「ワインの消費量が世界でも飛び抜けて多いフランスに肥満が少ないといわれることを指して、『フレンチパラドックス』という言葉があります。レスベラトロールは、その言葉の元にもなっている成分ですね」。