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2022.10.15 12:30

メディア初露出、「ワインの卵」はなぜ美味か?

田辺養鶏場の忍野たまごを使っただし巻き卵


異色のSDGs「ワイン鶏卵」


このように様々な可能性を持つワインパレスだが、同社は異色の開発も進めている。「ワイン鶏卵」だ。同じく山梨県の山中湖麓に位置する、田辺養鶏場と共同で開発を進めている。
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田辺養鶏場は、「食を通じて地域を豊かにしたい」との想いから1970年代に設立された、老舗の養鶏場だ。当養鶏場が生産する2種類の「忍野のたまご」、すなわち「コクの赤玉」と「うま味のピンク玉」の美味しさには定評があり、山梨県肉畜鶏卵共進会では10年連続1位を受賞しているという。

この田辺養鶏場と合同で始まった「ワイン鶏卵」開発企画は、「本来、産業廃棄物として廃棄されることの多かったワインパミスを利用することでSDGsに貢献したい」との想いから立ち上げられた。

「ワイン鶏卵」は、ワインパミスを餌として育った鶏が産んだ卵だ。鶏、サーモンなどにワインパミスを餌として摂取させた場合、産卵した卵に、ワインパミスに含まれるポリフェノール類が入る。牛、豚など産卵しない動物の場合は、ワインパミスを摂取させるとポリフェノールを一部消化し、その個体自らが健康になるといわれている。
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田辺養鶏場のWebサイトより

美味の理由は──


では、ワインパミスを餌として育った鶏が産んだ卵や食べるワインはなぜ「美味」なのだろうか。その理由はワインには含まれない、ワインパミス独自の成分であるオレアノール酸にあるようだ。

オレアノール酸は、多くの植物に含まれるトリテルペンの一種だ。その効能から、「ウルソール酸」、「ベツリン酸」とともに植物における「三大機能性トリテルペン」と呼ばれており、抗ガン作用、抗炎症作用、抗酸化作用などの生理活性を有する。

そんな効果的な機能を多く備えるオレアノール酸だが、これまでは植物でしか生産されない、人工合成できないという欠点があった。しかし、大阪大学などは2011年に、オレアノール酸の酵素遺伝子を明らかにし、合成することに成功した。化粧品や医薬品など、今後どのような形で工業生産化されるのか、オレアノール酸の可能性に期待が高まっている。
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取材・構成=石井節子 協力=伏見比那子

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