オマーンは、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の産油国でつくる「OPECプラス」に参加する23カ国のひとつ。OPECプラスは5日、原油価格を高い水準で維持するため日量200万バレルの減産を決めた。
オマーンは最近の原油高に乗じて財政再建を進めており、コロナ禍で失った財政余力を取り戻してきている。今年に入ってからの債務償還額は約65億ドル(約9500億円)にのぼる。
ムーディーズは6日、オマーン国債の格付け自体は従来の「Ba3」で維持しつつ、見通しを1段階引き上げた。債務状況の改善を理由に挙げており、2021年に63%だった政府債務の国内総生産(GDP)比は2022年末には45%弱まで下がる見通しだとしている。
オマーンの財政収支は2014年から2021年までGDP比で年平均9.6%の赤字だったが、2020年以来の原油収入増加によって黒字に転換する見通しとなっている。ムーディーズによれば、2022年通年の原油価格が平均105ドルで推移すると想定した場合、年末時点でGDP比6%近くの黒字を達成できる見込みだという。
原油高が向こう数年続くことになれば、オマーン政府は「ポストオイル」時代をにらんだ財政・経済改革も進めやすくなりそうだ。
半面、財政が健全化すると、高所得者を対象とした所得税の導入をはじめ、オマーン政府の計画する改革の実行が政治的に難しくなるおそれもある。高所得者の所得税は当初、2023年から徴収される見込みだったが、2024年以降に先送りされる公算が大きくなっている。
こうした懸念を踏まえてか、ムーディーズは「将来の原油需要の減少や価格低下に対するオマーンの構造的脆弱性は依然として非常に高い」とも警告している。ムーディーズによると、オマーンの石油・天然ガス部門は今年、GDPの4割超、政府収入の8割超、輸出の66%を占める見通しとなっている。
オマーンの信用格付けは、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)も4月に「Bプラス」から「BBマイナス」に、フィッチ・レーティングスも8月中旬に「BBマイナス」から「BB」にそれぞれ引き上げている。
一方、国際通貨基金(IMF)は5日に公表したオマーンに関する最新の報告書のなかで、原油高による恩恵に言及しながらも、「不確実性が引き続き見通しに影を落としており、とくに短期的にはグローバルな原因による下振れリスクがある」と指摘している。
(forbes.com 原文)