中道:本当に自由に色々な場所に行っているんですね。
MAKI:そうですね。ただ、初めて訪れる国ばかりでもありません。例えばアフリカで言えばナイロビは頻繁に滞在しています。ナイロビは国際的な都市で、様々な人々に出会え、アフリカの各都市へのアクセスもよく、ハブという感じです。
現状はどこかに拠点を置くのではなく、パンデミックの制限や自分の興味といった要素を鑑みて、総合的に滞在先を決めています。
ナイロビにて現地カメラマンと取材(写真=MAKI NAKATA)
中道:この番組のテーマは日本人がもっと世界に打って出た方がいいと伝えることであり、海外に出ることで日本の良さもより見えるようになるため、様々な角度からゲストの経験をシェアしています。世界に身を置き、海外から自分の故郷を見たり、もしくは日本人として世界で仕事することでわかった、文化や考え方の違いはありましたか。
MAKI:正直、日本人として意識することはほとんどありません。ただ、それが強みとなって、仕事やコミュニケーションに繋がっているのかもしれないという認識はあります。
パンデミック前に、「海外から新規顧客を呼び込みたいから」と、声をかけてもらえた島根県の宿のプロジェクトがその一例です。私はそのブランディングに携わることになり、ノルウェーのロフォーテン諸島を参考に、北欧をテーマにすることにしました。最初のブリーフィングの際に漁村が衰退しているという話を聞き、それをきっかけにロフォーテン諸島を取材。そこからのインサイトを取り入れることで、新しいブランドを提案しました。
世界各地を移動する中で見えてきたものをベースに、意外な視点や組み合わせを提案することに価値があるのだろうと認識していますが、私自身、日々の生活であまり日本人ということを意識することはないです。
中道:非常に理解できます。僕も海外生活が長く、周りもインターナショナルな集まりなので、国籍を意識するより、“世界人”という意識が強いです。
MAKI:ただ、アジア人としての位置付けや、人種の視点に関しては自然とアンテナを張っている気がしています。例えば、モントリオールであれば人種の多様性がある一方、ケープタウンは今でも場所によって人種が分かれていたりもします。アフリカの視点から考えると人種は無視できず、何かしらの意識はしているのかもしれません。
中道:日本人のアイデンティティはよく話題に上がりますが、自分なりに考えたりしますか。
MAKI:私にとっては難しい課題です。どちらかというと、日本人としてのアイデンティティというより、自分は何者であるかというアイデンティについて考えることが多いです。
アフリカの各国を訪れていると、例えばケニアやナイジェリアでは自分のルーツを非常に意識している人たちが多い印象があります。そういう人たちと出会ったことで、私自身も自分のアイデンティティについて考える機会が増えました。
私のような生き方も世界的に少しずつ増えてきているものの、まだまだマイノリティだと思います。日本に限らず、どの国を訪れても「すごく変わった生き方だね」と捉えられることが非常に多いです。
今は自分のアイデンティティをもとに、どうやって自分なりの価値を抽出できるかを常に考えている状態、 “彷徨っている”という方が感覚としては近いかもしれないです。