コストは採用の6分の1 政府も1兆円投資の「リスキリング」とは?

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「労働移動」にも対応できる、"進化した人材"になるための「リスキリング」とは?


海外企業がリスキリングを導入する理由


DXという言葉が日本で注目され始めたのは2019年頃、新型コロナウイルス感染症が広がる少し前くらいのタイミングだったと思います。しかし、私がテクノロジー分野の海外カンファレンスに参加していた2016年頃には、DXという言葉は一般的ではなかったのですが、デジタル分野の新規事業を、AIを活用して行う等の議論がさかんに行われていました。

その際よく言われていたのは「デジタル化は欠かせない。しかしそれを実現できる人材がいない」ということでした。まさに今の日本のような状態でした。その解決策として、自社のカルチャーを理解している優秀なスタッフにデジタル分野のスキルを習得させ、社内で配置転換するリスキリングに注目が集まり始めたのです。

なぜ海外企業では、リスキリングに対して積極的なのでしょうか。主な理由は以下の通りです。

1. リスキリングは採用よりコスト安


企業にとって最大のメリットは、採用コストと比較して、従業員へのリスキリングコストは1/6で済むこと、という説があります。これは、世界的に有名な人事コンサルタント、ジョシュ・バーシン氏が述べている説です。くわえて、ある分析結果では、リスキリングの成果を出すためには、平均で12カ月から18カ月かかるという試算があるものの、それでも採用と比較してコストが安いというのも大きな理由です。

2. 社内の人間をリスキリングしたほうがデジタル化は早く進む


かつてないスピードで企業がデジタル化に取り組むようになり、特に高度なデジタルスキルを保有する希少な人材を社外から採用することが困難になりました。また、そういったデジタル人材を採用しようとしている間にDX計画が遅れてしまうので、社内のことをよく分かっている人材を長期的な視野でリスキリングしたほうが、デジタル化が早く進むという理由です。

3. 外部人材の退職リスク


日本でも最近よく耳にしますが、デジタル分野の高度なスキルを持っている人材は引く手数多のため、仮に採用できてもカルチャー等が合わないと判断した場合、すぐに退職してしまう可能性が高いため、即戦力ではないものの社内業務を理解していてカルチャーに合っているスタッフをリスキリングしたほうが結果的に予定通りに計画が進むという理由です。

4. 今後もデジタル人材の採用困難な状態は続く見通し


2020年に発表されたAPEC Closing the Digital Skills Gap Reportでは、2019年にアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールの5カ国で調査した結果、求人案件の10件のうち7件が既にデジタル関連のポジションの募集だったとのこと。デジタル化の取り組みはますます積極的になっており、外部からの採用が困難な状態はしばらく続くという見通しから、社内人材へのリスキリングに注目が集まっているのです。
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