「リスキリング、すなわち、成長分野に移動するための学び直しへの支援策の整備や、年功制の職能給から、日本に合った職務給への移行など、企業間、産業間での労働移動円滑化に向けた指針を、来年6月までに取りまとめます」
実は、まさに「日本をリスキリングする」の理念のもと、リスキリングに特化した、日本初の非営利団体を設立した人物がいる。ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事、後藤宗明だ。
彼の著書「自分のスキルをアップデートし続ける『リスキリング』」の一部を以下、一部再編集の上、抜粋転載で紹介する。
リスキリングは直訳するなら、「スキルの再習得」「職業能力の再開発」といった表現になるかと思いますが、分かりやすく表現すると、「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」と言えるのではないかと思います。
海外ではデジタル化が進む中で「技術的失業」を未然に防ぎ、労働移動を実現するための解決策としてリスキリングが着目されてきた経緯があります。そのため、成長産業、特にデジタル分野の職業に就くためのスキル獲得とほぼ同義でリスキリングを捉えている場合も多くあります。それもあり、DX時代の人材戦略として、リスキリングが注目されているのです。
リスキリングとスキルアップの違い
今まで私たちが頻繁に使っていた「スキルアップ」とリスキリングは何が違うのでしょうか。
実は、スキルアップは和製英語で、英語では全く通じません。ただ英語には、スキルとアップの順序をひっくり返した「アップスキリング(現在の職務の専門性をさらに向上させるために新しいスキルを獲得すること)」という言葉があります。
例えば、経理部の社員がより高度な経理業務に必要なスキルを習得することなどが分かりやすいアップスキリングの事例となります。
Salesforce社の定義では、「従業員がそれぞれの現在の分野で、適切な役割を果たせるように訓練機会を提供すること」とされています。現在の分野で、というのがアップスキリングです。一方、Salesforce社やシンガポールの教育機関Emeritus Institute of Managementは、リスキリングを「全く異なる業務を行うために必要な新しいスキルを獲得するプロセスのこと」と定義しています。
アップスキリングが日本語で言うところのスキルアップ全般を指し、リスキリングの意味を含んでいることもあります。全世界でNew World. New Skills.というリスキリングのプロジェクトを行っているコンサルティング会社のPwCは、統一してアップスキリングという表現を使っています。