多様性の好循環が生まれる
最近では、VCで働いていた方が起業したり、ベンチャー企業の重要なポジションで活躍するというケースも増えている。私が働いていた現在のサイバーエージェント・キャピタルの元同僚たちは「CAVマフィア」と呼ばれ、Makuakeの中山亮太郎さんを始め、海外で起業していたり、私と同じく独立してVCを立ち上げたり、様々な場所で頑張っている。
VCは金融業であり、ファンドの運用期間は基本10年という場合が多く、今までは年齢の高い、企業のキーマンとの人脈を持っている男性が多い世界だった。近年では若い頃からVCで働き、新しい感性や人脈が活かせる領域でのファンドを立ち上げる人も増えてきており、投資家のダイバーシティも進みつつある。
また、海外のVCは、ごく一部のエリートかエグジットした起業家しか入れない閉じられた世界といわれていたが、日本のVCの状況は少し違う。人数は決して多くはないが、インターン、新卒採用や中途採用でもVCでの求人はある。そういう意味でも、海外の優秀な人材が、VCの仕事を求めて入ってくることも、もっとあってよいと思う。
日本のVCに、日本人だけでなく世界の優秀な人材が参加し、起業家と切磋琢磨することで起業家を多面的に支援し、事業の成功確率を上げたり、逆に起業家に感化され起業したり、ベンチャー企業の重要ポジションとして転職したり、若い方が独立しVCを立ち上げることも、スタートアップ業界の成長のために必要だ。
これから日本のスタートアップが世界を舞台に活躍するために、スタートアップとVCが両輪となって、両者の質と量を向上させていくことが、日本のプレゼンスを高めていくためにも重要になる。
そのなかでVCがパフォーマンスを上げていくためには、VCが自らの多様性を育み、様々な視点でエコシステムを構築し、広範な支援を張り巡らせることが必要不可欠だ。
佐藤真希子◎iSGSインベストメントワークス代表パートナー。2000年、サイバーエージェント入社。2006年サイバーエージェント・ベンチャーズ出向(現:サイバーエージェント・キャピタル)し、国内のシード・アーリーステージのベンチャー企業への投資事業に従事。2016年、iSGSインベストメントワークスを五嶋一人、菅原敬と設立、代表パートナーに就任。現在88社への投資を実行、IPO実績はインパクトホールディングス、ビザスク、エクサウィザーズなど。