キャリア・教育

2022.10.14 08:30

多様性の好循環で、日本発スタートアップを世界の舞台へ

成相 通子

5年後10年後の未来を考え、未来からの逆算でマーケットを捉え、起業家が実現したい未来を多様な視点や価値観で理解し、バイアスなく投資判断を行うこと。

そして、事業の成長のために必要なソリューションを、様々なスキルを持つ多様なキャリアを持つメンバーで応援することで、起業家に提供できる価値の最大化と、LP投資家(有限責任組合員、ファンドの運営に出資額を限度に責任を負う投資家)から預かっている資金の最大化ができる、と確信している。

キャピタリストの年齢や性別だけでなく、国籍やそれぞれの強み、キャリアも含め、多様性のあるVCであることが、起業家やLP投資家に選ばれる理由となり、VC経営という点からみても、成功に必要不可欠な条件に今後はなっていくと思っている。

他の仕事とは時間軸がちがう


VCの仕事はよく総合格闘技と表現されることがある。資金調達などの金融知識だけでなく、インキュベーションのノウハウ、営業ルートの紹介、人材採用や育成、日々困難に直面する起業家に寄り添い、事業に必要な支援を行っていく、複雑で多様なスキルや人脈・経験が必要だ。

投資先の発掘では、キャピタリストとしてのブランディングや、投資ジャンルにおいてスペシャリティを持つ事、常にその領域の知識をアップデートするというようなインプットも大事な仕事だ。

更には、ファンドへ出資してくれているLP投資家とのコミュニケーションもファンド経営という面ではとても大事だ。

また、VCの仕事は時間軸が長いのも特徴だ。通常の仕事では短期間で成果を求めらるが、VCの仕事は、投資をすることが目的ではない。

投資をした会社が成長し、資金調達を重ねると、取得した株の価値が高まっているように会計上は見えるが、本当に利益が確定するのは、取得した株式を売却した際になる。

売却のタイミングの1つである株式公開の場合、会社設立から株式公開までの平均経過年数は10年ほどと言われている。時間軸が他の仕事とはいかに違うかがわかると思う。

時間軸が長く、成果を出すまでに時間がかかる事は決して悪いことではない。

起業家と共に、会社をゼロから立ち上げることの困難や試練、喜びといった部分を間近で聞き、共に涙したりしていく中で、自分の信じた起業家やサービスが、世の中に浸透していくのを間近で見られるという奇跡的な機会に立ち会えるこの仕事は、何にも変え難く、長く働き続けることでこの仕事の真の醍醐味を味わえると思っている。

そのためにも優秀な人材が業界に定着し、長くキャピタリストとして働いてもらうための環境整備や、インセンティブの設計、人脈構築のサポートやナレッジの共有など全体の底上げも、今後ますます重要だと思う。
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文=佐藤真希子

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