多様性の好循環で、日本発スタートアップを世界の舞台へ

佐藤真希子(iSGSインベストメントワークス取締役 / 代表パートナー)、撮影=若原瑞昌

私が独立系のベンチャーキャピタル(VC)である、iSGSインベストメントワークスを五嶋一人、菅原敬と3人で共同設立したのは2016年。当時はまだまだ女性のベンチャーキャピタリストも少なく、独立系VCでは日本初の女性で代表権を持つパートナーとなった。

iSGSインベストメントワークスでは、ファンドの決裁権者に女性がいることで、女性起業家との接点も多くなり、結果的に多くのビジネスチャンスにつながってきたと感じている。

現在、iSGSインベストメントワークスが投資活動を行っているiSGS ARISEファンドでは、女性が起業したスタートアップへの投資が40%を大きく超えている。

女性起業家への投資は具体的な目標数値は一切定めておらず、シビアにVCとして魅力的な起業家や社会に良いインパクトを与えうる企業に投資をした結果、このような割合になった。

女性起業家の投資先は確実に成果を上げてきている。

投資した女性起業家については、イグジット実績や投資リターンはもちろん出ている。また数年以内のIPOを視野に入れ、事業が大きくスケールしている会社も複数ある。

1号ファンドから投資をし、M&Aによるイグジットを実現した後、2度目の起業に挑戦し、再び我々が投資したシリアルアントレプレナー(連続起業家)もすでに生まれている。

我々のファンドは投資先同士や、ファンド出資者であるLP投資家とのコミュニケーションの機会を多くしているが、そういった場でも女性起業家がナレッジの共有を積極的に行ってくれたり、我々のコミュニティの価値向上を一緒に高めようとしてくれていると感じることも多い。

過去の成功体験が足かせにもなる


多様性は性別だけでなく、年齢の観点からも間違いなく重要だ。

設立から6年が経過し、設立当時は30〜40代だった我々3人の代表パートナーも、年齢とともにリーチできるネットワークも変わってきたと感じている。

年齢のせいだけではないが、10代や20代の若い感性や文化、価値観やライフスタイルについて、どんなに学んでも完全に理解するのは難しく、若い起業家やキャピタリストのネットワークへの接点も難しくなる。そこが弱点になり得ると考え、我々とは違う世代のキャピタリストに入ってもらうことが必要だと感じていた。

そのタイミングで、2020年に、インベストメントマネジャーとして20代の安喜(あき)理紗がジョインした。彼女はフットワークが軽く、地方や同世代の起業家、投資家らと新しいネットワークを築いており、我々のチームの投資先の発掘に非常に良い影響を与えてくれている。

ベンチャー投資の世界は、年齢が上がるにつれ、ナレッジや人脈が蓄積して行くことは強みでもあるが、逆に過去の成功体験や自分の価値観が逆に足かせになることもある。
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文=佐藤真希子

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