ビジネス

2022.10.13 10:00

新型コロナ以降の厳しい世界情勢が小売業に与え続けた影響

Getty Images


輸送コストの増加


サプライチェーンの問題は、連鎖反応を引き起こし、世界中のガソリン価格の大幅な上昇を招いた。Statista(スタティスタ)によると、2021年、オランダのガソリン1リットルあたりの平均価格は、1ガロンあたりに換算すると7.11ドル(約1032円)だった。2022年3月には、オランダの価格は1ガロンあたり約9.43ドル(約1369円)にまで上昇した。米国でも、1ガロンあたり4.17ドル(約605円)まで上がり、同国でのガソリン価格の最高記録を更新した。
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ガソリン価格の上昇は、配送時の燃料サーチャージに加え、輸送コストの上昇を招いた。TIMEは、中国〜EU間の輸送経路に関して「上海からロッテルダムまで40フィート(約12.19メートル)のスチールコンテナの貨物を海上輸送すると、現在1万522ドル(約153万円)の費用がかかり、過去5年間の季節平均と比べると、なんと547%も高くなっている」と報じている。 一般的な輸送コストの上昇のもう1つの理由は、中国向けの輸送用コンテナが不足していることだ。2020年に20フィート(約6.09メートル)で1800ドル(約26万2200円)だった新しいコンテナの価格は、わずか1年後に1個あたり3500ドル(約50万9900円)にまで急騰し、いつまでも下がる気配がない。

これを受けて、Levi Strauss(リーバイス)やTommy Hilfiger(トミーヒルフィガー)などの小売業者は、より迅速に輸送できる航空貨物輸送に切り替えた。これは、初期費用は高いものの、長期的にはコスト軽減に役立つ。また、一部の小売企業は、需要への迅速な対応とコスト削減のため、製造拠点を移している。例えば、中国から、労働賃金が中国の半分であるベトナムに変更した例もある。

消費者行動と需要の変化


経済の混乱、物価の上昇、雇用不安、その他さまざまな不満から、消費者は必要なものを優先的に購入し、あまり贅沢をしないという考え方に変わってきている。実際、米国最大の倉庫・流通市場では、衣料品、電子機器、家具、家電製品などの売れ行きが鈍化し、すでに在庫の取り扱いに苦慮している。
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この逆境は中小規模の小売業者に限ったことではない。Walmart(ウォルマート)やTarget(ターゲット)でさえ、消費者行動の変化から始まった値下げにより打撃を受けることになったのだ。これはまさに諸刃の剣だ。というのも、2022年のホリデーシーズンに需要が大幅に増加した場合に備えて、倉庫を満杯にしているからだ。需要が従来の年末ホリデー商戦のようなかたちで戻ってくる可能性もあれば、過去にトイレットペーパー、水筒、電池、消毒液などで見たように、備蓄を目的とした「パニック的」な買いだめのようなかたちで戻ってくる可能性もある。

しかし「不幸中の幸い」ということわざもある。この2年間で、eコマースや小売業を営む人々は、かつてないほどたくましくなったといってよいだろう。彼らはパンデミック、不況、情報漏えい、サプライチェーンの問題など、さまざまな困難を乗り越えてきた。そしてもちろん、これらの逆境が訪れる度に、また新たな余波が襲ってくる。だからこそ、各部門が常に最良と最悪のシナリオ両方を事前に想定し、可能な限りシームレスに事業を継続するために、継続的に代替手段を探し、把握しておくことがこれまで以上に重要だといえるだろう。

forbes.com 原文

編集=Akihito Mizukoshi

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