「火震」測定探査機がほこりをかぶり瀕死状態、NASA発表

NASAの火星探査機インサイトは2022年4月24日、第1211火星日にこの最後の自撮り写真を撮影した(NASA/JPL-CALTECH)

「Marsquakes(火震)」を測定するNASAのミッションはまもなく終わりを迎える。赤い惑星の砂塵嵐がソーラーパネルの発電を妨げているためだ。

探査機はあと1〜2週間のうちに「宇宙ごみ」になるかもしれないとNASAは発表し、今後2週間、同機の科学機器の電源を切断することを決定した。
 
2018年に、地震測定を行うために火星のエリシウム平原に着地した探査機InSight(インサイト)は、惑星の南半球で起きた「大陸サイズ」の砂塵嵐のためにここ数週間、電力供給がさらに減少した。

NASAは、一過性の嵐がインサイトのソーラーパネルから塵を吹き飛ばしすことを期待していた。しかし、この遠方の砂塵嵐は火星の大気を砂まみれにして、ソーラーパネルが太陽光を集めることをいっそう困難にしただけだった。NASAの報告によると、インサイトのエネルギーは、1火星日(かせいじつ、sol)あたり425ワット時から、275ワット時へと減少した。

2022年5月、NASAはインサイトが過去最大の火震を観測したことを報告した。それは地球以外で観測された最大の揺れでもあった。2022年5月4日に起きた推定マグニチュード5の火震は、これまでに同ミッションが1313回検知した最後の揺れだった。

この最近の嵐が起きるまで、インサイトは同機の地震計を1火星日おきに稼働させていたか、2022年5月、電力低下によってスイッチを切らなくてはならなくなった。現在のところインサイトは、NASAがいうところの「余命数週間」の状態にある。

「電力に関して、私たちははしごの一番下の段にいました。今は地面にいます」と南カリフォルニア、NASAジェット推進研究所でインサイトのプロジェクトマネジャーを務めるチャック・スコットはいう。「もしここを切り抜けられれば、冬まで測定を続けられます、しかし私は次にやってくる嵐を心配しています」

InSight
この3Dレンダリング画像、インサイトが火星表面にいる様子を表している(Getty Images)

以前NASAは、インサイトが稼働不能になる時期を2022年10月後半から2023年1月の間と予測していた。今となっては少々楽観的だったようで、次の砂塵嵐がインサイトのミッションを終了させる運命を握っている。2022年末まで延命できる唯一の道は、一過性の旋風がソーラーパネルを洗い流すことだが、その可能性は低い。

ほこりをかぶることは、火星に着陸するNASAミッションのほとんどに最終的に降りかかる運命だ。赤い惑星を15年間走り回った

NASAの探査車Opportunity(オポチュニティ、愛称「Oppy、オッピー」は、度重なる砂塵嵐のためにバッテリーが復活不能になるまで消耗し、2018年に力尽きた。

NASAの火星探査車、Curiosity(キュリオシティ)とPerseverance(パーサヴィアランス)は、いずれも原子力を動力としているため、嵐が電力レベルに影響を与える心配はない。

インサイトは2018年5月に打ち上げられ、2018年11月に火星に着陸、惑星の地殻、マントル、および核の研究を行ってきた。ミッションは以下のとおりだ。

・岩石質の天体がどうやって作られ、進化し惑星になったのかを調べる
・火星の内部構造と組成を調査する
・火星の地殻構造活動と隕石の衝突頻度を測定する

インサイトの当初のミッションは2020年12月に終了したが、NASAは2年間ミッションを延長した。

澄み切った空と大きな瞳に願いを込めて。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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