WHOがコレラ復活を警告、最も恐ろしい「殺人鬼」について知っておくべきこと

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今年になってコレラの症例が急増しており、戦争、貧困、および気候変動がこの「招かれざる復活」に最適の環境を作っていると世界保健機構(WHO)のテドロス・アダノム事務局長が警告を発し、この予防可能だがしばしば致死的である脅威に対して各国が深刻に取り組むよう要請している。

全世界で数年間症例の減少が続いた後、昨年「心配なコレラの大流行が勃発」したとテドロスは述べた。

テドロスによると、今年に入って27カ国が流行を報告しており、その中でシリアは過去6週間だけで1万例以上の疑わしい症例を報告しており、かつてコレラ撲滅が間近であると宣言していたハイチも含まれている。

流行は危険度を増し、頻度も高くなっているとテドロスは警告し、限定的なデータながら、今年の平均致死率が過去5年間平均の3倍近くなるだろうという。

コレラは、コレラ菌に汚染された水や食物を摂取することで発症し、菌は感染者の排泄物からうつることが多く、衛生状態や下水処理が不適切な地域では急速にまん延しやすい。

コレラは、治療しなければ数時間で人を死亡させ、軽症あるいは無症状が多いものの、10人に1人は水溶性下痢や嘔吐、筋痙攣などの重篤な症状を起こす。

コレラはワクチンで予防可能であり、経口補水液(あるいは非常に重篤な例では点滴および抗生物質)で容易に治療できるが、「ほとんどの人々がこうした簡単な治療さえ利用できないのが実情である」とテドロスはいう。

コレラは人類の歴史で最も恐れられた病気であり、現在も世界の一部では主要な死因だ。インドで発生して以来、過去200年間に何度もパンデミックを起こし、数百万人を死に至らしめている。コレラは治療しなければ最も急速に死を招く人間の感染症だ。かつて脱水した被害者の皮膚の色から「青い恐怖」と呼ばれたこともある。
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翻訳=高橋信夫

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