交通行動データを収集・処理するスマートフォン向けアプリ「Daynamica」を開発した米デイナミカ(Daynamica)の共同創業者でもあるファン教授は、収集したデータに基づき、「交通幸福度マップ」を作成している。
デイナミカのアプリは、特定のルートを通るユーザーの位置情報データを追跡、ユーザーにそのルートを通ったときの感情について評価するためのアンケートに答えてもらい、ルートと「幸福度、意義深さ、苦しみ、悲しみ、ストレス、疲労感」といった感情の関連性を明らかにするものだ。
調査の結果、ミネアポリスで「幸福度」のスコアが最も高かったのは、ミシシッピ川沿いの自転車道、ウエスト・リバー・パークウェイだった。教授はこの「移動幸福度マップ」を紹介する動画のなかで、「都市計画の担当者は、人々の感情を形づくる大きな力を持っているということだ」と述べている。
また、同州運輸当局の関係者は、「通勤といえば多くの人が、車で渋滞に巻き込まれている状況を思い浮かべるでしょう。それはまさに不幸な状況です」と語っている。
一方、車より自転車や徒歩で通勤する方が幸福だとする調査結果は、ファン教授の研究以外でも示されている。カナダ統計局の調査によると、自転車または徒歩で通勤している人の66%は、通勤の方法に「とても満足している」という。
だが、自動車と公共交通機関で通勤している人のうち、同じように答えている人はそれぞれ、32%、25%にとどまっている。また、通勤の方法に「不満がある」人は、利用する交通手段が自転車の人では6%。車では18%、公共交通機関では23%となっている。
そのほか、国際ストレス・マネジメント協会のフェロー、デビッド・ルイス博士によると、車や電車で通勤している125人の心拍数と血圧を戦場に向かう戦闘機のパイロットと訓練演習に参加している機動隊員と比較したところ、通勤中の人たちの方が、強いストレスを感じていることがわかったという。
機動隊員や戦闘機のパイロットには、自分が置かれた状況がもたらすストレスに対抗するために取り得る行動がある一方、通勤客には何もない、つまり「どうすることもできない」という無力感を持つことが原因だという。博士は、車や電車での通勤は、人を「いら立たせ、不安にさせ、気落ちさせる」と説明している。
また、スイスの経済学者ブルーノ・フライとアロイス・スタッツァーは、1時間かけて車で通勤している人が徒歩や自転車で通勤する人と同程度の幸福感を得るためには、「収入を40%増やす必要がある」との研究結果を示している。
(forbes.com 原文)