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2022.10.11 09:15

ソフトウェア企業に特化したVC「Heavybit」の異端の投資戦略

Getty Images

多くのベンチャーキャピタリストは、不況を乗り切るために、コスト削減と収益向上に取り組むようスタートアップにアドバイスしている。

しかし、ソフトウェア開発者向けツールを開発している企業にとって、このアドバイスは逆効果になりかねないと、ベンチャーキャピタル「Heavybit」のマネージングディレクターであるトム・ドラモンド(Tom Drummond)は指摘する。

「このアドバイスは、理屈としては正しいが、開発者向けツールを提供する企業は打撃を受ける可能性がある」と彼は言う。

Heavybitは8000万ドル(約115億円)の4号ファンドを組成し、アーリーステージのスタートアップ約20社に独自のアドバイスを行う予定だ。同社は、開発者向けツール企業が必要とするアドバイスを熟知していることをセールスポイントにしている。

ドラモンドによると、開発者向けツール企業にとっては、収益の最大化を目指すよりも、ソフトウェアを無料で提供した方が良い場合があるという。コミュニティの構築にリソースを投入することで、長期的により大きな市場を形成できる可能性があるのだという。「我々がよく目にする悪い例は、早い段階で収益を追求することで、獲得できるチャンスに上限を設けてしまうことだ」と、彼は言う。

Heavybitは、この手法によって成功を収めてきた。過去のファンドでは、出資先の70%が次の資金調達を実施したり、事業売却によるエグジットに成功した。ドラモンドによると、前号ファンドで3000万ドルを使い切ったとき、出資者たちは同社の手腕を高く評価し、追加で1000万ドルを出資したという。

サンフランシスコに本拠を置くHeavybitは、これまで主にシードラウンドやシリーズAで出資をしてきたが、新ファンドはプレシードラウンドでの投資を行う予定だ。同社は、初回の資金調達以降も成長を継続できるスタートアップを発掘し、その後のラウンドで追加出資をすることを目指している。

しかし、クランチベースのデータによると、2011年から2018年までにシードステージ以降で追加調達ができた企業の割合は30%未満だという。このことから、Heavybitの手法はリスクの高いアプローチであることがわかる。スタートアップ投資が減速する中、同社はソフトウェアの無料提供をアドバイスすること含め、他のVCとは異なる道を歩み始めている。
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編集=上田裕資

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