ビジネス

2022.10.10 17:00

ジブリ鈴木敏夫の、ヒット作品を生む方法──仕事は公私混同でやるべき 


「こうして電話に出たのが宮さん(宮崎駿)でした。よし、と思ったんですが、またもや1時間、取材で聞きたい話をぜんぜんしゃべってくれない(笑)」

宮崎駿

その後、鈴木さんは高畑監督の映画「太陽の王子ホルスの大冒険」を観に行きます。そこで、驚くのです。それは、アニメで劇映画がつくられていたから。こんな作品をつくる人がいたんだと、すぐに2人に会いに行きました。

「宮さんとは最初からとにかくウマが合いました。気がついたら延々と2人でしゃべっていた。一緒に仕事ができたら楽しいだろうなと思いました」

そのときは世に出る可能性とか、そんなことはまったく考えていなかったそうです。

宣伝は内容をきちんと伝える


鈴木さんは、アニメージュの編集者から、後に映画の仕事をするようになるわけですが、理由は意外なものでした。

「話は簡単なんです。僕はもともとものぐさでしてね。雑誌で他人の作品を取り上げなきゃいけないのが面倒で(笑)。自分たちで作品をつくって、それをネタに本ができたらラクだな、と。宮さんなら毎日会っているから取材も簡単だし(笑)」

こうして生まれたのが、「風の谷のナウシカ」でした。

「映画づくりは面白かった。少ない努力で大きな成果を挙げられる仕事が僕は好きですから(笑)」

プロデューサーとして作品をヒットさせるコツについて尋ねると、こんな答えが返ってきました。

「実はシンプルです。奇をてらったり、変なことを企画したりするのではない。まじめに作品を理解し、その内容を観てもらいたい人にちゃんと伝える。これだけです。口はばったいですけど、みんなこれをちゃんとやっているのかなと僕は思う」

どういう映画なのか、さっぱりわからない宣伝も実際に目にするという。

「ジブリに成功の秘訣があるとすれば、内容をきちんと伝えていることです。これは誰でもできることだと思う。もうひとつは、やはり作品が面白いことですね。そうなれば、大勢のスタッフがみんな力を発揮する」

ただ、恵まれているのは、優れた作品の面白さを説明するだけだから、とも言われていました。面白くないものをつくっている環境にいたら、こうはいかない。

「だから、これだという道がはっきりしているのなら、やりたい作品やいい環境を求めて渡り歩くのはいいことだと思う」

仕事は公私混同でやるべき。自分が面白いと思うものにこだわる。少ない努力で大きな成果を挙げられる仕事を目指す。まじめに作品を理解して伝える。いい環境を求めて渡り歩け。鈴木さん流の、肩の力が抜けたヒット作品を生み出す方法なのでした。

文=上阪徹

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