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2022.10.10 17:00

ジブリ鈴木敏夫の、ヒット作品を生む方法──仕事は公私混同でやるべき 

ジブリのプロデューサーである鈴木敏夫(Getty Images)


「半年ほど前から一緒に創刊を準備していた編集プロダクションがあったそうなんですが、意見が合わないから一緒にやるのを突然やめたと編集長は言うのです。それで僕に話を持ってきた。でも僕は、アニメは全然わからない。しかも創刊号の発売日は5月末。頼まれたのが、5月連休明け。冗談だろうと思いました(笑)」
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さらに編集方針を聞いたら、まだ固まっていないという。どうしてアニメ雑誌をつくろうなんて思ったのか尋ねると、「息子が『宇宙戦艦ヤマト』のファンだから」と編集長は言い放ったそうです。

「思わず笑ってしまいました。仕事は公私混同でやるべきだと、このとき教わりましたね(笑)」

あえて雑誌の部数を落とす


翌日から、創刊に向けて大わらわの日々が始まります。まずは初日は、アニメに詳しい高校生に話を聞く。3日目に全体の内容を決めて、4日目に編集会議をスタートさせ、取材や編集に費やすことができたのは、1週間くらい。それを残りの1週間でまとめて創刊にまでこぎつけたのでした。
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「スタッフはみんなアニメの素人でした。だから、自分たちが面白そうなものをどんどん記事にしていきました。まさに公私混同(笑)。でも、それが読者に通じたのか、部数はどんどん伸びで40万部まで行きました」

しかし、売れる雑誌になると、今度は編集部のやりたいことがやりにくくなります。そこで鈴木さんは、なんと部数を落とすことを画策するのです。

アニメでは「銀河鉄道999」と「機動戦士ガンダム」の全盛期に、当時まだ無名だった宮崎駿監督を40ページの特集で展開したことがありました。

「すると、見事に20万部まで落ちた(笑)。会社の販売部は大騒ぎでしたね。でも彼らには理由がわからない。販売会議で「どうしてかな」なんて僕も一緒に悩んだりして(笑)。たまにこういうことがやりたくなるんですよ」

その宮崎駿監督や高畑勲監督との出会いは、最初に話を聞いた高校生から、「すごい作品をつくっている人がいる」と聞いたことがきっかけだったといいます。当時、まだ2人とも無名でしたが、アニメファンがそこまで言うのならと鈴木さんは取材を申し込みました。

「ところが高畑さんは取材を受けない、と。しかも電話口で1時間、なぜ自分がコメントしたくないかと延々話されて(笑)」

そして最後にこう言われたといいます。

“自分はコメントしないが、隣に宮崎駿という男がいる。同じスタッフだが、彼は別の意見を持っているかもしれない。電話を代わりますか”
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文=上阪徹

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