韓国ではカトリック、プロテスタント、仏教が3大宗教勢力として知られる。知人のカトリック信者は「カトリックの信者数は500万から600万人。プロテスタントは1300万人くらい。仏教の信者はそれ以上いる」と語る。キリスト教信者だけで全人口約5千万人の4割を占めることになる。韓国でも、政教分離原則はある。宗教団体が明示的に選挙で特定の候補を応援することはしない。でも、別の信者は「教会に行けば、こんどはこの候補を推す、という話が内輪で広がる」と語る。主要な選挙が終わると、当選者が有力寺院や教会を回って挨拶するというのも、日常風景だ。
そんな宗教団体のパワーはどこから来るのか。韓国人ならだれでも知っている言葉の一つに「シビルチョ(十一祖)」がある。これは年収の10分の1を献金するという意味だ。知人によれば、ローマ教皇庁を頂点として各教区を経て教会を管理するカトリックの場合、神父の給与も保障されている。このため、シビルチョもそれほど厳しくない。「今年は子供の受験で大変です」などと申告すれば、「今年は年3%でやりましょう」などとしてくれる。これに対し、独立採算制のプロテスタントの場合、各教会が独立採算のため、シビルチョが厳しくなる傾向がある。厳しい教会になると、信者の献金達成率をグラフにして貼りだすこともあるという。旧統一教会の元信者によれば、旧統一教会にも「シビルチョ」がある。ただ、それは献金の基本中の基本で、それ以外に様々な献金の要請が来るのだという。
それにしても、年収の10%と言えば結構な金額だ。私の知人のプロテスタント信者は「カネで信仰を証明するなんておかしいだろう。じゃあ、韓国でキリスト教が広まるまでの時代に生きた人々はみんな地獄に落ちたのか? そんなことありえない」と怒る。彼は近所の教会をあちこち回り、シビルチョをうるさく言わない教会を見つけて、通っているという。別の信者は「キリスト教には様々な宗派がある。自分は、その宗派がサイビ(偽物)かどうかを見分ける判断基準の一つは、メチャクチャな金額の献金を要求するかどうかに置いている」と語る。