「我々のポートフォリオが拡大していることに加え、シリーズBやシリーズCでの調達を必要とする素晴らしい投資先候補が存在することが資金調達の大きな動機となった」とPrime Moversの創業者兼ゼネラル・パートナーであるDakin Slossは述べた。
ワイオミング州ジャクソンに本拠を置くPrime Moversにとって、今回は3号目のファンドとなる。同社は、最初の2つのファンドである「Prime Movers Lab Fund I」と「Prime Movers Lab Fund II」で合計3億4500万ドルを調達し、アーリーステージ投資を実施した。今回のファンド組成により、同社の運用資産は10億ドルを突破した。
VC投資が鈍化する中での新規ファンド立ち上げは、環境が厳しいように見える。クランチベースによると、今年8月のスタートアップによる調達額は、2020年8月以降で最低レベルだったという。VCによる投資額は、7月から10%、前年同月からは52%減少した。
しかし、Slossは厳しい環境を気にかけていない。「歴史を見れば、あらゆる人が市場を読み違えていることがわかる。誰もが逃げ出したときこそ、素晴らしいディールが起きているときであり、身を乗り出すチャンスだ」と彼は話す。
JALが支援する超音速旅客機プロジェクト
Prime Movers Labの投資先は、製品の開発スケジュールが長いため、短期的な市場の変動をあまり気にしなくて良いことも、この時期に新ファンドを組成した理由の1つと言えるだろう。例えば、既存投資先のBoom Supersonicは、日本航空などが出資する企業だが、商業用超音速旅客機のリリースまで少なくとも3年を要する見込みだ。核融合発電のCommonwealth Fusion SystemsやFocused Energyがエネルギーを供給できるようになるのは、さらに先になりそうだ。
投資リスクを最小化するため、Prime Moversのパートナーたちは、各分野の専門知識や豊富なネットワークを有している。「このようなスキルがあれば、デタラメな会社をすぐ見抜くことができる」とSlossは言う。
Slossは、ファンドの立ち上げ以前から、このような資本に対する需要があることを認識していたという。「我々は、SPV(特別目的事業体)を通じてマルチプルが健全なグロース企業のポートフォリオを既に構築していた。しかし、SPVの数が増えて管理が大変になったため、ファンドを組成した方が妥当だと考えた」とSlossは言う。