──今後、営業組織が注力すべき業務は。
福田:顧客の課題と、製品やサービスをどのようにマッチさせて提案するか。それに尽きるでしょう。もともと提案は営業の基本業務ですが、ソリューション営業と言いながら、顧客の事業内容や事業構造を理解しないまま、いきなり提案を考える営業が多いのが実情です。
逆に、ソリューション営業という言葉に引っ張られ過ぎて、自社の製品やサービスに対する深い理解がないまま、「御社の業務課題は……」と先走る人もいます。顧客の課題は、顧客自身がいちばんわかっています。営業は、まず自分たちの製品やサービスについて誰よりも語れる存在でなければいけません。
顧客の理解と、自社の製品やサービスの理解。この2つがあって、初めて価値の高い提案ができます。営業が本質的な業務に集中できる時代になれば、そこで選ばれる営業と、そうでない営業の差がつくのでしょう。
──いまの立場から、営業という職種に期待することは?
福田:スティーブ・ジョブズはMITで行った講義で、「世の中にない新しいものを売るには、それを顧客に説明して理解してもらわなくてはいけない。そのためには量販店にただ置くのではなく、優秀な営業担当を採用する必要がある」という趣旨の話をしていました。私自身、ERP、CRM、MA、それぞれの黎明期にかかわってきて、顧客に新しい価値を理解してもらう難しさを痛感してきました。
ジャパン・クラウドも、いま同じ課題に挑戦しています。投資先の会社の製品の多くはそれまで存在していないカテゴリーであり、顧客に理解してもらうことが非常に難しい。例えば「決算業務のSaaS」「金融機関向けのSaaS」と説明しても、とっさにはイメージできません。
しかし、その壁を乗り越えて新しい概念を理解してもらい、製品を普及させることができれば、世の中に大きなインパクトを与えることができます。営業は、まさにイノベーションの伝道師。社会をよくしていくために、その役割はますます重要になると考えています。
福田康隆◎ジャパン・クラウド・コンピューティングのパートナー、ジャパン・クラウド・コンサルティング代表取締役社長。2004年米セールスフース・ドットコムに転職。翌年日本法人に移り、日本市場の成長を牽引。同社専務執行役員兼シニアバイスプレジデントを務めた後、14年マルケト代表取締役社長。20年より現職。