リーダーに送る、セールス人材と組織の育て方

福田康隆

ベストセラーとなった著書で、セールスにおける連なる協業プロセスを提示した福田康隆。マーク・ベニオフと出会ってから18年。営業手法が進化する最前線で、営業組織を率いてきた。現在はSaaSビジネスを仕掛けるキーマンとしての彼に、営業組織の未来像を尋ねた。


──セールスの現在地をどのように見るか。

福田康隆(以下、福田):経営戦略における営業の重要性は、いまも昔も変わっていません。会社が成長するためにはトップラインを上げることが必須であり、営業がいないと売り上げは伸びない。営業だけで売り上げが伸びるわけではありませんが、その重要性は現在も同じです。

変化が起きているとしたら、営業のスタイルです。二十数年前、私が社会人になったころの営業のイメージは「夜討ち、朝駆け」「接待」「人間力」といった要素や“伝説の営業マン”的逸話があふれていて、営業は個人技の世界でした。

しかし、いまは「営業を科学する」ことに関心をもつ人が増えています。インサイドセールスやカスタマーサクセスに代表される分業体制による仕組み化はその一例ですし、「個人技からチーム戦へ」という考え方が主流になりつつあります。またコロナ禍でのリモートワークをきっかけに顧客接点のチャネルも変化し、営業のスタイルそのものが多様化しています。

──なぜ、営業スタイルの変化が起きているのか。

福田:顧客の購買検討における変化はその一因です。かつて製品やサービスの情報を得るためには、営業担当に話を直接聞く必要があった。しかし、デジタルチャネルの拡大により、情報を取得するチャネルが増えました。

これまでは営業の行動や商談管理だけしっかり行っていればよかったのですが、いまは検討の早い段階で認知してもらうこと、さらによりよい顧客体験を提供することが企業としての差異化につながるようになりました。つまり、個人の営業力から会社として提供する顧客体験へ重要性がシフトしているのです。

一方、カスタマーサービスの分野でコールセンターからデジタルチャネルへシフトしたように、顧客側で先に行動様式やチャネルの変化が起きて、企業がそれに追随する例がこれまでも繰り返し起きてきました。
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文=村上敬 編集=神吉弘邦 写真=有高唯之

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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