若者の75%が「将来に不安を感じる」 気候変動教育が必須な理由

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若者の半数以上が気候変動に関して日常的に不安を感じていることが、英国の大学の研究で明らかになりました。

国連は、将来的に子どもたちが地球温暖化に対処する力を身につけられるよう、2025年から学校での気候変動教育の義務化を呼びかけています。

多くの国がパリ協定のこの目標に署名しているにもかかわらず、現在、教育制度で気候変動学習を義務付けている国はごくわずかです。​​

先進的な気候変動教育の取り組みを世界経済フォーラム(WEF)のアジェンダからご紹介します。


世界中の人々が、気候変動の影響を日々目の当たりにし、実感しています。夏の猛暑、洪水、暴風雨の被害はますます常態化しており、手遅れになる前に足並みをそろえてグローバルな行動をとらなければ、将来の世代が事態の収拾に追われることになります。

学校カリキュラムに気候変動に関する科目を取り入れることで、若者が、地球温暖化に対してより実践的に、そして、心理的にも適切に対処できるようになると、多くの人が考えています。

昨年、グローバルに行われた調査で、気候変動への不安が若者の約半数の日常生活に影響を及ぼしていることが明らかになりました。10カ国1万人の若者を対象とする調査を基にバース大学が行った研究では、回答者の75%が「将来に不安を感じる」と答えています。


英国の若者は、学校での気候変動教育の拡充を求めています。 Image: TEACH THE FUTURE

気候変動教育を求める声の高まり


国際機関は、正式なカリキュラムの一環として、学校が気候変動に関する教育を行うよう声をあげており、国連は、気候変動学習を2025年までに全ての学校教育に取り入れるべきだとしています。ユネスコが約50カ国の教育計画を分析する調査を行った結果、気候変動への言及がない国が半数以上に上ることが明らかなりました。生物多様性に言及している国にいたっては、わずか19%でした。

米国のシンクタンク、ブルッキングス研究所は、学校で環境への意識を高めることが消費者の行動に変化をもたらし、エネルギー消費や廃棄物の削減につながると主張。これは、2050年までにネットゼロを目指す上で、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーへの投資よりも大きなインパクトをもたらすとしています。

気候変動教育に着手している国


2015年のパリ協定への署名国は、気候変動教育の改善に合意したにも関わらず、実際に実行している国はごくわずかです。

イタリアでは2019年に法が成立し、学校での気候関連の学習を義務化した最初の国になりました。週1時間または年間33時間程度を気候変動問題に充てることが、全ての公立学校に義務付けられたのです。ロレンツォ・フィオラモンティ元教育相は、「教育をより迅速に推し進めなければ、2050年までに炭素排出量ネットゼロの目標を達成できる見込みはないでしょう」と述べています。

カンボジアでは、2020年に導入された高等学校向けの地球科学カリキュラムが新たに拡充され、気候変動問題が取り入れられました。学生たちは課題解決に向けたアプローチや技術を学ぶだけでなく、15のパイロット校が植林や気候変動対応型農業などのプロジェクトへの取り組みを進めています。

同様の動きは、他の国々でも見られます。2021年、アルゼンチン議会は総合的な環境教育の実施に関する法律を承認。同法により、学校は全ての学年の学生たちに環境教育を提供することが義務付けられました。この法が成立する以前は、環境問題はテクノロジーや社会科学などの科目で教えられていました。

英国では、小中学校で気候変動に関する内容がすでに扱われていますが、英国政府は「世界トップレベルの気候変動教育」を2023年までに実現することを約束しています。
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文=​​​​​​Stefan Ellerbeck, Senior Writer, Formative Content

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