中国の鉄鋼業界の状況はまさにこの典型例だ。不動産開発企業がプロジェクトを中止し、そして信用不足のため、業界の約29%が倒産間近だと発表した。何十億トンも販売して利益をあげた昨年から大きな落ち込みだ。実際、昨年中国は世界の鉄鋼生産量の約半分を占めていた。
河北敬業集団の創業者でもある李赶坡会長は「業界全体が赤字で、今のところ転機は見えない」という。そして、こうした問題は当然ながら広がっている。鉄鉱石の価格は3月以降36%下落している。鉄鋼業界は一例にすぎない。中国政府が破綻の拡大を食い止める行動を起こすまで、中国はこの種の後退に直面し続けるだろう。
中国政府が恒大集団の発表と同時に行動していれば、こうした経済的な痛みの多くを避けることができたはずだ。不動産開発企業の破綻の脆弱性を軽減するために、破綻した不動産開発企業にではなく金融システム内の他企業に直接融資していれば、どうしようもなく広がった事態を回避できたかもしれない。そうしていたら、信用を回復し、融資が引き続き商業の原動力となっていただろう。
中国人民銀行は民間の金融機関や国有銀行がより積極的に融資を行えるように、また預金の安全性に対する顧客の不安を解消するために、金融システムの貸付可能資金を増やすこともできたかもしれない。しかし中国政府は行動を起こさなかった。そのため、金融破綻とその懸念は中国の金融システム全体で教科書どおりに進行していった。中国政府が何かしら対策を取らない限り、経済への悪影響はますます深刻になることが予想される。
しかし残念なことに、中国政府が政策実施の必要性に完全に目覚めたという兆候はほとんど見られない。今のところ中国の最高政策決定機関である政治局は、財政難という問題の対処では地方や省政府が主導権を握っていると主張している。このような責任転嫁は、中国の指導部がこれまで考えられていた以上に米政府を研究していることを示唆している。
と皮肉な冗談はさておき、責任転嫁と行動力の欠如は中国経済にとって良いことではない。どう考えても、金融危機による財政難に地方政府、省政府では対応しきれない。中国政府は長年にわたって地方政府や省政府に中央が決めたインフラプロジェクトへの融資を強要してきたため、地方の政府機関は地方の問題、ましてや国の金融システムの必要性に対処するための財源を欠いている。その役割を果たせるのは政府だけであり、これまでのところ政府はわずかな金利引き下げ以上の行動を取ることを拒否している。
(forbes.com 原文)