スノーピーク未来開発本部のエグゼクティブクリエイター菅純哉は「宇宙でも地球上でも同等の『快適さ』を求めるため、衣服の着心地の良さや快適さを通してリラックスできることは共通のポイントでした」と語るが、異なる点は主に2つ挙げた。
(1)船内へ持ち運べる重量の制限
(2)入浴ができないという点
(1)に対しては素材や縫製により高い堅牢性を実現。着替えのサイクルを減らすことで、宇宙船内に運ぶ荷物の減少に繋げた。(2)については体温調整機能があり、蒸れや臭いが起こりにくく、速乾性のあるウール・ポリエステル素材を用いることで衣服内の環境を向上させたという。
「スノーピークでは従来より焚き火を安全に楽しむことのできるウェア開発など『野遊び』を楽しむために常に問題意識をもって開発に努めています。今回も宇宙でより快適に過ごすために何を解決すべきかという課題解決型の服づくりが生かされました」と、菅は振り返る。
私たちも体感できる「宇宙船内服」の秘密
「Space Life Comfortable」シリーズ:Space Life Comfortable Long Pants
宇宙船内服は着想から2年かけて完成。極限状態の宇宙空間において、リラックスできるようにさまざまな点に配慮した。
まず、大部分が無縫製で編み上げられる技術「ホールガーメント」(島精機製作所の商標登録)を採用し、糸が少ないのが特徴。ごわつきがなく、伸縮性が高いため快適さを実現した。素材はウールポリエステルの糸「NIKKE AXIO(ニッケアクシオ)」(日本毛織の商標登録)をベースにしており、蒸れにくく臭いにくく、消臭・抗菌作用がある。
また、宇宙船内で視覚への刺激を抑えるため、カラーは「黒」を採用。ISS内では区割りがあるものの、プライバシー空間への悩みの声があったことから、ピタッと体に密着せず、ゆとりあるサイズ感に仕上げた。
宇宙船内服は、一部の仕様は若干異なるが、私たちもスノーピークの「Space Life Comfortable」シリーズで体感することができる。
シタテルの河野は「この服に大きな斬新さはないかもしれません。ですが、未来を彷彿とさせる新しいアプローチでつくられた服です。アップルウォッチウルトラを買うような感覚で楽しんでいただければ」と語る。
若田飛行士がどのタイミングで着用するかは分からず、この点もチェックポイントだ。今回の打ち上げについての情報はこちらから。ISSからの中継で、人間らしさと着心地の良さが追求された新しい船内服姿が見られることを期待したい。
若田宇宙飛行士の「宇宙生活」は快適に保たれるのだろうか。(c)JAXA