移民は米国納税者に大きな利益をもたらす、高卒未満でも生涯で約1850万円プラス

ハイチからの移民であるエリザベス・ヴォルマーは、2018年1月12日にフロリダ州ハイアリアで行われた帰化式典で米国市民になった(撮影:Joe Raedle / Getty Images)


適切な基準で算出すると、最近の平均的な高卒未満の移民における生涯での財政収支は、12万8000ドル(約1850万円)のプラスになるとクレメンスはいう。「生まれてくる子どもや孫を含めると、高卒未満の平均的移民における生涯での財政効果はプラス32万6000ドル(約4720万円)になります」

2017年に全米科学アカデミーの委員会のためにブラウらが作成した推測値は、資本税所得を除外したことで、高卒資格をもたない最近の平均的移民のプラス効果を38万1000ドル(約5500万円)も過少に見積っている。つまり、資本税収入を考慮しないことによって、ブラウらは高卒未満の平均的移民よる財政効果を、プラス12万8000ドルではなく、マイナス10万9000ドル(約1580万円)であると結論づけている(全米科学アカデミーによる移民とその子孫に関する財政試算は、全体としてはプラスである)。

マイケル・クレメンスによる新しい財政試算(およびアプローチ)は、移民を巡る政策論争と関係している。まず、クレメンスは、高卒資格を持たない個人の入国は、在住者にとって財政的な恩恵であることを発見した。学歴の低い人々はしばしば移民批判の標的になる。クレメンスは別の研究で、難民や亡命希望者を入国させることも、米国納税者にとって正味でプラスになることを発見した。同氏は、トランプ政権が移民受け入れを減少させたことで、米国経済は年間90億ドル(約1兆2000億円)以上を失い、政府全体でも年間20億ドル(約2900億円)を失ったと言っている。

次に、連邦議会予算事務局(CBO)は2022年7月、科学および工学の博士号を持つ個人のグリーンカード(永住ビザ)に関する法修正によって10年間で10億ドル(約1450億円)の費用がかかると判断した。その結果、会計2023年度国防予算案に同補正案は追加されなかった。

予算事務局がどのようにして10億ドルの費用見積もりに到達したのかアナリストたちは困惑した。マイケル・クレメンスによる新しい財政試算とアプローチは、移民の受け入れ、特に高学歴移民の受け入れが米国納税者に財政負担をもたらす、という予算事務局の結論に対してさらなる疑問を投げかけている。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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