インフレの影響で、米消費者を取り巻く状況は1年前から激変

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たった1年で、米国の状況はずいぶん変化した。

コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーが2021年秋に発表した消費者調査リポートには、「消費者は、贅沢と社交にお金を使いたがっている(Shoppers are feeling spendy and social)」というバブリーな表題がつけられていた。そして、年収が10万ドル以上と回答した人の半数は「ホリデーを心待ちにしている」と述べていた。

同社の考えは正しかった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックと、それに伴うさまざまな問題があったにもかかわらず、米国勢調査局の最終集計においては、2021年の年間小売り売上は2020年比で18%増となったことが明らかになったのだ。

さて、マッキンゼーがこの秋に発表する調査結果リポートの表題は何になるだろうか。「消費者はお金がなく消耗し、ふさぎ込んでいるかも(Shoppers are tapped out, exhausted, and gloomy?)」という表題はどうだろう。消費者に関するこうした描写が正しいのかどうかは、私にもわからないのだが。

主な悪者はインフレーションだ。とはいえその問題は、ガソリンや食料品などの価格よりもはるかに根深い。金利が急上昇している。つまり、クレジットカードの負債も膨らんでいくということだ。インフレの悪化を食い止めようとしている連邦準備制度理事会(FRB)が先ごろ約束したように、金利は今後も上昇を続ける見込みだ。

1年前の消費者には、「贅沢したい」と思えるもっともな理由があった。とりわけ、米政府の景気刺激策による多額の給付金を手にした消費者の多くが、それを借金返済に充てたことがある。折しも、不動産価格の値動きが激しくなり始めた。米国で販売された住宅の価格中央値は、わずか12カ月で3分の1以上も上昇。消費者は、豊富な現金とクレジットカードを手にしたうえ、住宅資産も高騰した。

それから1年が過ぎたいま、クレジットカードの借金は膨らみ、対前年比の負債増加率は、ここ20年あまりで最大となった。2022年7月だけをとってみても、リボルビング払いは年率で11.6%も増えている。

つまり、消費者が「実際には持っていないお金」を使ってきたツケが、ここに来て大きく膨らんでいるのだ。1年前、クレジットカード手数料の変動金利は平均でおよそ15%だった。それがいまでは、新規クレジットカードの変動金利はすべて21%を突破。一部の銀行が発行するカードにいたっては25%に近づいている。

この金利が、さらに上昇し続けるのは必至だ。FRBが、クレジットカード金利の基準である最優遇貸出金利(プライムレート)を徐々に引き上げているからだ。

一方、住宅ローン金利が上昇していることにより、不動産の活況にも陰りが見え始めた。住宅価格が値崩れし、家の資産価値が縮小しつつある。家を買い替えたり、不動産に投資したり、セカンドハウスを購入した人はいま、土地があってもお金がない「土地貧乏(land-poor)」とはどういうことかを実感している。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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