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2022.10.05 07:45

ラスベガス近接の湖から死体が続々 ドラマや映画の世界が現実に

干上がったミード湖から出現したボート 2022年8月撮影(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

干上がったミード湖から出現したボート 2022年8月撮影(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

1970年代半ばまでは、大っぴらにマフィアに牛耳られていたラスベガスだったが、いつも定型の脅し文句としてまことしやかに伝えられていたのは「ガタガタ言うと、湖に沈めるぞ!」だった。

いかにも映画やドラマに出てきそうなセリフで、ラスベガスの住人は半ば冗談としてしか聞いてこなかった。

ところが、である。

この20年間のラスベガスの都市部拡大とそれに伴う水の需要の増大、そして異常気象による降水量不足から、水瓶であるアメリカ最大の人造湖であるミード湖が、貯水量の75パーセントの水を失い危険レベルに突入した。そして、この干上がった湖の底から、水に浸かって腐食したドラム缶が現れ、そこから死体が出てくるというまさに映画やドラマのような出来事が起こった。

ラスベガス住民の水辺のリゾートだった


ラスベガスの東あるミード湖は、長さ2330キロメートル(1450マイル)、流域面積約62万9100平方キロメートルにおよぶコロラド川を堰き止めた湖だ。琵琶湖の2倍の面積を超すミード湖は、フーバーダム(着工時の第31代アメリカ大統領ハーバート・フーバーに因んで名付けられた)によって生まれ、飲み水の供給だけでなく水力発電、そして砂漠に住むラスベガスの住民にとって唯一の水辺のリゾートとして君臨してきた。


ミード湖とラスベガス湖の間に位置するリゾート地(Photo by George Rose/Getty Images)

ラスベガスの住民は、マイホームを求めて働き、成功したら次はボートを買って、ボートを湖まで引っ張っていってミード湖で釣りや水浴を楽しむのが長年のステータスになっていた。

しかし近年、どんどんミード湖の水位が下がり、もうボートを陸から滑らせて入水させる設備も機能しなくなり、飲み水をひっぱるために埋めた巨大なパイプも水の上に顔を出してしまうありさまとなって、さらに水深深くパイプを引き直している。また水辺そのものも、ひからびた土地は悲惨の象徴でもあり、そのリゾートとしての魅力も大きく後退してきた。

現実の事件とつなぐ鍵は見当たらず


さて話をドラム缶に詰められた死体に戻そう。

1905年にラスベガスが設立されてから、およそ120年が経つが、本当に湖の底から死体の入ったドラム缶が出てきたのは、今年が初めてだ。5月に初めて死体があがった後、毎月のように「ドラム缶死体」が干上がった湖底に横たわっているのが発見されるようになり、8月までに5つの死体があがっている。

新聞やテレビに、湖の藻屑に覆われたいかにも古いドラム缶と、そこにくくりつけられたロープのようなものがリアルに映るが、いまのところ死体を現実の事件とつなぐ鍵は何も見つかっていない。ただ、死者が身にまとっていた服から、70年代から80年代の出来事との見立てがされている。
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文=長野 慶太

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