そのランウェイを飾ったのは、フランスのブランド「ロシャス」のクリエイティブディレクターであるシャルル・ドゥ・ヴィルモラン(Charles de Vilmorin)や、リアリティ番組『ル・ポールのドラァグ・レース』に出演するフランスのラ・グランダム(La Grande Dame)など、数々のデザイナーやアーティストたち。ありとあらゆる容姿やサイズ、セクシュアリティが勢ぞろいしたショーは、これ以上ないほどにリアルだった。
ウェインサントはそれと同時に、話題を集めるKポップ8人組ガールズグループLIGHTSUM(ライトサム)のためのバーチャルデザインを8種類、メタバース上で披露した。Web 3.0のファッションプラットフォーム「BNV(Brand New Vision)」によるデジタルウェアラブルというかたちで実現したそれらのデザインは、NFT(非代替性トークン)として販売される。現実世界およびデジタル上の特典として、ウェインサントとLIGHTSUMのグリーティング動画やプレビューのほか、限定ショーやコンサートへのアクセス権などが含まれる予定だ。
「現実世界には存在しないデザイン」を創造することには、どんな魅力があるのだろうか。「サイズや重力を気にする必要がないので、ずっとラクだ」とウェインサントは説明する。「これからもっと多く手掛けていきたいと考えている。メタバースでファッションショーを開催するのもいいかもしれない」
10月末のNFTリリースと時を同じくして、BNVのファッション専門メタバース「BNV World」が正式にローンチされる。
BNV Worldでは、限定商品のアクティベーションやファッションショー(先の発言が本当なら、ウェインサントも関与するのかもしれない)、無料と有料のショールーム、「play to wear(着て遊べるファッションゲーム)」などが設けられるほか、コミュニティ内でデジタルプロダクトを売買・取引・レンタル・贈与できるマーケットプレイスもできる見込みだ。
BNVの創業者リチャード・ホッブス(Richard Hobbs)は、「他のメタバースはどちらかというとゲームが主体で、ファッションを中心としたものではない」と話す。「もっとファッションに親しむことができ、互いに交流できるソーシャルなメタバースを作りたかった」
BNV Worldは、フランス・パリで、物理的なかたちでのローンチも行う。韓国文化を紹介するマガジン「K! World」と提携し、ギャラリーを10日間借り切って行われる模様だ。
ホッブスは、香港を拠点にしながら、アジア全域で小売・流通・商品開発・調達などに携わってきた服飾業界のプロだ。カリフォルニア州ロサンゼルスにあるおしゃれなコンセプトストア「Le Brea」のアジア地区ライセンシーでもある。筆者はホッブスに、BNVについての詳細を聞いた。