NASAが世界中の視聴者にいわなかったことがある。それは、宇宙生物学火星探査車は赤い惑星に無事着陸したが、その際ヒートシールド、パラシュート、金属バネ、発泡材、ネット、その他さまざまな「宇宙ゴミ」を、これから探究するために訪れる古代の川底のあちこちにばらまいてきたことだ。
今パーサヴィアランスとヘリコプターのインジェニュイティは、火星へのその劇的な軌道突入、降下、そして着陸が残した思い出の数々を見つけ続けている。こういうことをした探査車はパーサヴィアランスが初めてではなく、NASAのキュリオシティもゲール・クレーターの底で自身の廃棄物の断片を見つけている。
人類は火星にゴミを散らかすべきなのだろうか?
そのとおり。そうすべきであり、未来の人々は私たちのこうした「宇宙ゴミ」を探究の第一歩の証として懐かしむだろうと科学者らはいう。
NASAの火星探査車、パーサヴィアランスが2022年6月23日に撮影した自身が着陸した時の「宇宙ゴミ」(NASA/JPL-CALTECH/ASU)
「私たちが地球の古代文明を研究するとき、当時のゴミの山に目を通します」とカリフォルニア工科大学惑星科学教授で火星探査車の研究者であるベタニー・エールマン博士はいう。「しかしこれらは単なるゴミの山ではありません。それらは人類が火星に残した最初の一歩の遺物なのです」
つまり、惑星のゴミは近未来の宇宙考古学者にとって宝になるということだ。
「火星探査車の着陸地点は、将来人間が火星に降り立った時には国立公園になるでしょう。そして、着陸の際に外れた着陸システムの一部や発泡材は歴史的記念物になるでしょう」とエールマンはいう。
もちろん宇宙機関の「宇宙ゴミ」の範囲は、岩の間に挟まった発泡材や金属片だけではない。パーサヴィアランス自身が、おそらく約10年のうちに砂塵嵐のために機能を停止して寿命を迎える。同じような運命が、ヘリコプターのインジェニュイティにも、現在ユートピア平原を探査中の中国の探査車Zhurong(祝融)にも訪れる。NASAの探査車ソジャーナ、スピリット、オポチュニティの3機は何年も前に機能を停止した。
NASAの探査車、オポチュニティが2005年に火星大気を通過する際に自らを守ったヒート・シールドの残骸の画像(NASA/JPL/CORNELL)