火星の軌道は地球の各宇宙機関によって包括的に観察されている。実際、現在8つの宇宙探査機が火星を周回して活動中で、撮影した画像を地球に送り続けているが、火星の退屈な赤い表面を見たいという大衆の熱意は冷めてしまった。
本当にそうだろうか? 欧州宇宙機関(ESA)は最近、同機関の探査機マーズ・エクスプレスが撮影した火星を上から見た画像を新たに公開した。そこでは(かつてそこに存在していた)水がどこで、どうやって火星の地形を削り出したのか、その秘密が暴かれている。それは驚くべき画像の数々だ。
画像には火星の南部高地にある直径140キロメートルのホールデン・クレーターが映し出されている。人間の目で見た状態を模倣した「トゥルー・カラー」画像には、かつて火星表面の最大9%を覆っていた可能性のある一連の川と湖が見えている。
火星の非公式にホーデン・クレーターと呼ばれている部分の鳥瞰図は、デジタル地形モデルおよびESAのマーズ・エクスプレスに搭載された高分解能ステレオカメラのチャンネルとカラーチャンネルを元に生成された(クレジット:ESA/DLR/FU BERLIN, CC BY-SA 3.0 IGO)
かつては水をたたえた貯水池だったと考えられているホールデン・クレーターは、火星の古代生命を探す重要な地域であり、いずれ探査車が訪れることは間違いなく、有人ミッションが訪れる可能性すらある。上の画像は、クレーターとそこへ向かう流域を示している。
クレジット:ESA/DLR/FU BERLIN, CC BY-SA 3.0 IGO
この上の画像は、ホールデン・クレーター北東部の、かつて水が流れたいたと考えられる場所を表している。ここに見える数々の突起は、火星の歴史のある時点に、火星表面の下で固体の水が溶けた証拠だ。
これらの新しい画像は、ESAが火星の水和した鉱床の詳細な全体地図を初めて公開したことで得られた。ESAのマーズ・エクスプレスおよびNASAの周回探査機マーズ・リコネッサンス・オービターのデータを使って作成されたその地図は、泥と塩を正確に指し示している。これはかつて火星表面を水が流れ、岩石を科学的に変質させた動かぬ証拠だ。
科学者らは、泥は火星の初期の水の多い時期に作られたものであり、塩類(現在も見ることができる)は水が干上がった結果の産物だと考えている。
泥は、有機分子の「反応中心」を作ることで地球の生命の起源にひと役買った可能性があると考えられている。
複数の火星ミッションから得られたデータを用いて、火星初の詳細な水和鉱物マップが作られた(ESA/MARS EXPRESS [OMEGA] AND NASA/MARS RECONNAISSANCE ORBITER [CRISM])