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2022.10.04

垂直農法と実験室製の牛肉、中東で「未来の食料」への投資が進む

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農業の始まりは約2万3000年前にさかのぼるとされており、それを示す証拠が現在のイスラエル・ガリラヤ湖近くにある。しかし、この地域が農業発祥の地の1つだったとはいえ、現代の中東では多くの地域で食料を育てることはそう簡単ではない。

極めて気温が高く、水資源に乏しい乾燥地帯で育つ作物は限られている。そんな過酷な環境に対応できる数少ない植物がナツメヤシだ。乾燥地農業研究国際センター(ICARDA)によると、アラビア半島のナツメヤシの栽培面積は約36万5000ヘクタール(約3650平方キロメートル)で、世界の3分の1を占めるという。

他の作物の栽培を試みてもうまくいかないことがある。例えば、サウジアラビアは過去に小麦の栽培を試みたが、コストが高くつき、貴重な地下水の無駄遣いになることがわかった。政府が方針を転換し、2015年から2018年にかけて同国の小麦生産量はほぼゼロになったが、最近になって再び増加傾向にある。

ほとんどの湾岸諸国は食料を大量に輸入しなければならない。コンサルティング会社Strategy&(ストラトジーアンド)の推計によると、湾岸協力会議の6カ国(バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)は穀物の93%、肉の62%、野菜の56%と、食料の約85%を輸入している。

これらの国々が「世界の食料安全保障指数」で大きく順位を落とすことがないのは豊かな富のおかげだ。また、食料供給を確保するために海外の農地に投資してもいる。しかしこうした投資は慎重に管理しなければ、地元住民と対立する可能性がある。

未来の食料


湾岸諸国の農業は現在、新たな勢いを得ているようだ。そうした国々の投資家は培養牛肉から垂直屋内農場まで、より革新的な製品や技術に資金を投入している。

アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでは2022年初め、アール・マクトゥーム国際空港近くの広大な敷地に世界最大の垂直水耕栽培農場がオープンした。33万平方フィート(約3万660平方メートル)の敷地に広がるこの施設では、従来の農業よりも95%少ない水で年間1000トン超の葉物野菜を生産することができる。

この施設で栽培されているのはレタス、ホウレンソウ、ルッコラなど。一部は「Bustanica(ブスタニカ)」というブランドで近隣のスーパーに並ぶ予定だ。しかし多くはエミレーツ航空をはじめとする航空会社の機内食に使用される。
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翻訳=溝口慈子

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