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2022.10.03

年収2000万円の攻防も! 営業人材争奪戦が起きる3つの理由

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かつては専門スキルが身につかない職種として、新入社員に敬遠されていた「営業」。だが、いま20代から50代のセールス人材の需要に変化が起きているという。人材紹介企業2社に最新状況を尋ねると、その背景が浮かび上がってきた。


いまセールス人材が注目を浴びている。1000万円台〜2000万円台の条件を提示しても、戦略営業ができる人物の獲得は難しい。エグゼクティブ職のスカウトとなると、さらに困難というのだ。

ビズリーチ事業部を統括するビズリーチの伊藤綾によれば、年収1000万円以上の営業職に関する求人数は、5年前の同月との比較(2017年と2022年の1月)で2.2倍に増加。業種別の構成比では、IT・インターネット業界の伸びが著しい。

「クラウド領域のサービスを展開する外資系の企業で、システム導入のために技術的な知見が必要な『プリセールス』。企業や自治体でDX推進の動きが広がるなかで自治体や特定業界に精通した『法人営業』。さらにエンタープライズシステムの営業を担える経験豊富な『管理職』ポジションへのニーズが高まっている」(伊藤)

ビズリーチでは、企業と求職者が直接やり取りできる。営業職の募集概要では、どの企業も職務内容と条件を詳細に掲げる。筆者が閲覧した例では「フィールドマーケティング、フィールドセールス、セールスオペレーションの各チームや、技術部門のリーダーと連携。パイプライン構築への体系的な仮説を立て、ニーズに関する詳細な評価を行う」という具合だ。

属人化した職種とされがちな営業が、デジタルツールの浸透、再現性のある業務に分業化する流れから、得意な部門に精通したスペシャリストが活躍する職能に変化。営業マネジメント職では、セールスの業務工程を段階的に分けて体系化し、他部門と連携する「チームプレイ」ができる組織へと変革を促す役割を求められている。

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2022年4月下旬、ビズリーチ上に一般公開で掲載された情報を元に編集部が独自に作成。好条件を提示するのは外資系IT企業だが、多様な分野に法人営業の需要がある。リモートワークを前提にした好待遇の募集も近年の傾向。この表にないが、東京都以外でも特定業種(ロボティクス、感染症予防ヘルスケア、再エネほか)によって1000万円台近辺の募集があった。

「外資系企業や新興のIT企業ですでに顕著でしたが、今後はハイクラス営業職の人材獲得競争がさらに激化することがうかがえます。戦略的な営業のノウハウを求めて、経験が豊富な40代後半から50代で転職決定が出ているのも特徴。『メーカーからIT・インターネット業種』のように、異業種へ転職する動きも出ている」(伊藤)

人材の争奪戦が起きる理由には、顧客の獲得や売り上げ改善に先んじて、業種を問わず、優秀なセールス人材に「組織改革の役割」を期待する側面がある。

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ワンキャリアは新卒採用サイトのほか、転職者用の「ONE CAREER PLUS」を提供。2021年6月のサービス開始から、20000件のキャリアデータ(転職事例)が蓄積された。会員登録で読めるリアルな体験談が特徴。サイト内コンテンツ「キャリアの地図」では、企業名をクリックすると「その企業へ転職してきた人」「他社へ転職していった人」のエピソードが転職理由とともに紹介されている。
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文=神吉弘邦

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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