英住宅市場、通貨安と金利上昇で急失速のおそれ

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英国の住宅市場が急激に冷え込みそうな雲行きになっている。

銀行のせいとも言えるし、政府が悪いとも言えるだろう。投資家にも責任があるかもしれない。そう、これは単純な問題ではないのだ。いずれにせよ、当面の間、家を売ったり買ったりするのが難しくなる人が出てきそうだ。

きっかけは、数日前、英国のクワシ・クワーテング新財務相が経済成長の促進策として減税や規制緩和を打ち出したことだ。

あいにく、投資家は好感しなかった。通貨ポンドは米国のリチャード・ニクソン大統領がドルと金の交換を停止した1971年の「ニクソン・ショック」以来、対ドルで最安の水準に急落した。27日の記事執筆時点では1ポンド=1.08ドルほどとなっている。

英国債の利回りも急騰し、10年物では4.4%強まで上昇している。流動性が非常に高い証券分野ではかなり大きな動きだ。英国債の値下がりは、減税は英政府の債務増大を招く一方、歳入の減少分を補えるほどの経済成長は見込みにくいとの懸念から、投資家が売りを急いだからだ。

こうした為替相場や債券相場の急変動を受けて、英国の一部の銀行は住宅ローンの新規貸し出しの「停止」を決めた。住宅ローンを最近申し込んだ人は、当面それを受けられなくなるということだ。

しかも、この停止は一時的なものにとどまらない可能性もある。10年以上にわたって堅調な成長を続けてきた住宅市場が軟化し始めれば、銀行側はすぐに無期限の停止に切り替えるかもしれない。

住宅ローンを借りられなくなれば、住宅市場は完全に停滞してしまうだろう。英国の人口の大部分が住むイングランドでは、住宅所有者の34%が住宅ローンを抱えている。

つまり、住宅所有者の3人に1人は、銀行などから融資を受けられないかぎり、新たな物件を購入することができないのだ。

これほど多くの買い手候補が締め出された場合、英国の住宅市場は好調を維持できるだろうか。おそらく難しいだろう。

英国の不動産を所有するすべての人にとって、厳しい状況になりそうだ。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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